寝覚めはいつも突然に

7/8

716人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「⋯⋯は?噂⋯⋯?」 「あれっ聞いたことない〜?外部入学してきた1年A組の羽月柊は〜、いつもイケメンを物欲しげな目で見てるビッチだ〜って噂。心当たり無いの〜?頼んだらヤらせてくれるかもってS組でも話題になってたことあるよ〜、他の風紀委員と一緒に行動してる事多いから実際に声かけたコは居ないみたいだけどね〜」  あ、もうオレたち2年生か!時の流れ早すぎ〜、と話を続ける会計に、返事をする事が出来ない。物欲しげな目、ビッチ、ヤらせてくれる。会計の軽いトーンの言葉が頭の中をぐるぐると巡る。そんな噂が流れていたなんて全く知らなかった。普段から仲良くしてくれているA組のクラスメイト達も、本当は俺のことをそんな風に認識しているのだろうか。  ⋯⋯正直心当たりしか無い!!!そんなに顔に出てた!?!?やっぱり委員長に注意されてたのがその顔なのか!いや別にイケメン単体を見てニヤニヤしていた訳では無くてイケメンとその横のチワワを眺めながら脳内で妄想を膨らませていただけなんだけど。腐男子である事を隠している俺がそんな言い訳を使える筈も無く。  何と答えて良いか分からずネクタイを握りしめていると、俺が図星を指されて困っていると勘違いしたのか不気味な笑みを深める会計。キャラ変わってんぞチャラ男。腹黒にジョブチェンジですか?という事は副会長が代わりにチャラ⋯⋯駄目だそれは想像したら終わりな気がする。 「そんな怯えたカオしないでよ〜、俺がいじめてるみたいじゃ〜ん」  ほらほら可愛い寝癖ももう隠せたよ〜、と頭をぽすぽす叩いてくるので無理矢理お礼の言葉を口にして立ち上がる。半ば押さえ込むように肩に掛けられていた腕からは、いつのまにか力が抜けていた。身体に力が入っていたのは動揺していた俺の方だった。  そのまま出て行く生徒会連中を見送り(俺たちの会話は全く聞いてなかったっぽい)、のろのろとネクタイを結ぶ。横からの視線には気付かないフリをさせてもらいたい。「⋯⋯羽月」色々キャパオーバーなんだこっちは。「おい」腐男子生命が(おびや)かされてるんだぞ。 「おい羽月「ッ何ですか!?」⋯⋯ネクタイ凄い事になってる」  勢いよく噛み付いた俺に構わず淡々と告げる委員長。胸元を見下ろすと、確かにネクタイはぐちゃぐちゃだった。(ほど)こうと闇雲に引っ張っていると、ふいに上から大きな手が重なる。それを脳が理解した瞬間、俺は何故かその手を払い()けていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

716人が本棚に入れています
本棚に追加