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翌朝、鈴丸は少し行った先にある松吉の家を訪ねていた。
「おはよう、松吉おじさん!」
「おう、よく来たな」
顔を出した松吉は、少年の姿に快活に笑った。すでに出かける準備はできていて、戸口に用意してあった練習用の木刀を二振手に取ると、外に出てくる。
「じゃあ、行くか」
「うん」
二人が連れ立って向かったのは、町を抜けた先にある原っぱだ。鈴丸が剣術の稽古をつけてもらうのは、もっぱらこの場所であった。彼らは木刀を手に打ち合いを始める。少し剣を交えては、松吉が指導を挟む。
太陽が頭上高く昇った頃、ようやく休憩をすることになった。鈴丸は琴の作ってくれた握り飯の包みを、松吉にもひとつ手渡す。
「いつも、俺の分まで用意してもらって悪いな」
言いつつ、握り飯にかぶりついた松吉は美味そうに噛みしめた。ほんのりとした米の甘みと、まぶされた塩のしょっぱさに疲れが飛んでいくのを感じる。
「ばあちゃんたち、おじさんには世話になってるからって。おれがおじさんと出かけるって言うと、いつも嬉しそうなんだ」
「そうか。でも、俺もお前に教えるのは楽しいんだ。だから、持ちつ持たれつだな」
「うん」
松吉は彼の頭に手を置いた。
「よし! 食ったら、すぐに稽古再開だぞ」
明るく告げる松吉に、少年も元気よく応じた。
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