一章 暁の町にて紡ぐ

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 肩を落とした少年の頭を、松吉は力強く撫でた。 「分かればいい」 「……それにしても、おじさんって相当強いんだな。一瞬で伸しちゃうなんて」 「まあな。持ってたのが木刀じゃなけりゃ、こいつら、今頃息もしてなかっただろうさ。元々大した腕前じゃなさそうだったしな」  こともなげな発言は冗談には聞こえず、鈴丸はぎょっとする。それでも、相手が大した腕ではないという松吉の見解には、少年も同感だった。 「やっぱそうだよな。じゃなきゃ、おれ、もっと早くにやられちゃってるよ。あいつら、刀の手入れもろくにしてなさそうだったし、得物をただ振り回してるだけみたいだったんだ。本当に、近頃ここらで暴れてる山賊なのかな?」  そう言ってから、少年はあることに気がついてますます首を傾げた。 「あれ? 待てよ。話に聞いてた山賊って、確か二人組じゃなかったっけ?」  これを聞いて、松吉が口の端を上げる。 「そうだ。よく気づいたな。確かに、先日馬借を襲ったという輩も二人だったらしい」 「でも、今日ここにいた奴らは三人だった。それに、腕に覚えのある用心棒が相手だったら、そう簡単に勝てるとも思えない……じゃあ、噂になっている奴らとは別者だった?」 「いや、こいつらのうち二人の特徴は、襲われた人たちの言っていたそれと合う……さて、つまり、どういうことだと思う?」  鈴丸は、問うてくる松吉を見つめ返した。必死に頭を働かせると、一つの可能性が見えてくる。
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