27人が本棚に入れています
本棚に追加
「……用心棒も、ぐる?」
松吉が、よくできました、というふうに頷いた。
そう、山賊は最初から三人組だった。そして馬借などの集団を狙う際は、標的を絞ると、仲間のうちの一人が浪人に扮し護衛に名乗り出て、まんまと標的の中に入り込むというからくりだ。
恐らく、刀身が一番手入れされていた男が、その役だったのだろう。錆びた刀を持った浪人など、それだけで疑われかねないからだ。
最終的に、用心棒と山賊が打ち合っていると見せかけて、実は仲間同士で刀を交える。それならば、適当なところで用心棒役がやられたふりをすればいい。
「なんて奴らだ」
己を磨くことはせず、そんなところにばかり知恵を回す。その頭があるのなら、もっと他の道とて選べたのではないか。鈴丸は、どうしてもそう思ってしまう。
そうこうしているうちに、町から複数の男手がやってきた。先頭にはあの父娘の姿もあって、少年を目にすると急いで駆け寄ってくる。
「ひどい怪我をしてるじゃないか。わしらのために、申し訳ないことだ」
「おれが勝手に出しゃばっただけだから」
「いや、あんたがおらなんだら危なかったよ。おかげで、命も荷も助かった。ありがとう」
これに、町の男衆も沸き立った。
「子どもが一人で戦ってるっていうから誰かと思えば、髪結い処の跡取りじゃねえか。大した度胸だ。お手柄だったな」
皆に称賛されて、鈴丸は眉尻を下げて笑った。
最初のコメントを投稿しよう!