一章 暁の町にて紡ぐ

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「……用心棒も、ぐる?」  松吉が、よくできました、というふうに頷いた。  そう、山賊は最初から三人組だった。そして馬借などの集団を狙う際は、標的を絞ると、仲間のうちの一人が浪人に扮し護衛に名乗り出て、まんまと標的の中に入り込むというからくりだ。  恐らく、刀身が一番手入れされていた男が、その役だったのだろう。錆びた刀を持った浪人など、それだけで疑われかねないからだ。  最終的に、用心棒と山賊が打ち合っていると見せかけて、実は仲間同士で刀を交える。それならば、適当なところで用心棒役がやられたふりをすればいい。 「なんて奴らだ」  己を磨くことはせず、そんなところにばかり知恵を回す。その頭があるのなら、もっと他の道とて選べたのではないか。鈴丸は、どうしてもそう思ってしまう。  そうこうしているうちに、町から複数の男手がやってきた。先頭にはあの父娘の姿もあって、少年を目にすると急いで駆け寄ってくる。 「ひどい怪我をしてるじゃないか。わしらのために、申し訳ないことだ」 「おれが勝手に出しゃばっただけだから」 「いや、あんたがおらなんだら危なかったよ。おかげで、命も荷も助かった。ありがとう」  これに、町の男衆も沸き立った。 「子どもが一人で戦ってるっていうから誰かと思えば、髪結い処の跡取りじゃねえか。大した度胸だ。お手柄だったな」  皆に称賛されて、鈴丸は眉尻を下げて笑った。
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