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始まりの骨 ミズノコイビト
冷たい夜に、月が射す。
薄暗がりの中、声を聞いた。
『お前は、もう死ぬ。』
声は確かに、そう言った。
少し低いけど、澄んだ声だった。……前にも聞いたことがある声。
どこだっけ?
いつだっけ?
――――ああそうだ、あの時に、生まれた時に。
この声は何だったっけ、誰だっけ……ああ、そうだ。
(かみ、さま?)
『お前はもう死ぬ。――――だから、その前に聞いておこう。死んで、声が聞けなくなる前に。……お前が今一番やりたいことは、何だ?』
神様の言葉を、一つ一つ聴く。
ああ、この人は。
私を助けてくれるんだなって、思った。
「わ、た し……は、私、は……。」
かは、と小さく息を吐く。
やりたいこと、今一番やりたいこと。
やり残したこと。
たくさん、あるけど。
一つしか、ない。
いくつも、あるけど。
一つだけ、ある。
「好きって、言いたいです。『 』に。」
かすれそうな声を、振り絞って。
たった一つの、願いを。
「……そうか。」
神様が、微笑んだ気がする。
そして神様は、私を見守るって言ってくれた。
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