砂とライオン

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* この国は砂地が多くて陽射しが厳しく、人々はいつも飢えていました。どこを選ぼうとも生きていくのが厳しい土地ゆえに、人々はいくつもの部族に別れ、水辺や緑地を求めててはいさかってきました。 《狐》は自分が、いつどこで生まれれたのかを知りませんし、覚えてもいません。 物心がついたころにはすでに、年の近しい仲間をきょうだいとして、その部族の中に居ました。その国では、人同士のいさかいで、あるいは厳しい自然環境のために、親をうしなう子も多く、それゆえに、子どもは親がだれであろうと、部族の子としてきょうだいのように育てられていました。 同じように育てられていても、その中から抜きんでてくる子らがいます。彼女も、そうしたひとりでした。 たてがみのように巻きあがった金のくせ毛に、まつ毛の発達した濃い色の瞳。力強く日に灼けた肌は彼らに共通していますが、均整な体つきにしなやかな筋肉をそなえたその肌は、被毛のなめらかなライオンを思わせました。 彼らは信仰上の理由から、真名より呼び名を優先して使います。男にも劣らぬ勇猛さと、判断力。幼いうちから、次世代の指導者候補と目された彼女につけられた呼び名は《獅子》。 子どもたちは長じると、その適性によって部族内の役割を割り振られます。《獅子》と呼ばれた彼女と、冷静さと観察力で《狐》と名付けられていた彼が任じられたのは、ともに戦闘部隊でした。
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