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軽快に舞い踊るのれんをくぐり、音を立てないようにそうっと扉を開けた。人影はなく、赤い座布団が敷かれた椅子がいくつかあるだけだ。どうやら、1階は待合室らしい。すぐ左手には2階へと続く階段があった。女学生のささやき声のような、のどかな笑い声が、誘うように鼓膜を揺らしている。
この先には、一体何があるのかしら。これから何が待っているのかしら。階段を見上げていても答えは出ない。
――知りたければ上っておいで。きっと、素敵な出会いがあるよ。
見えない糸に引かれるように、わたしはゆっくりと足を進めた。
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