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夕飯がテーブルに並べられたのを見計らうかのように、朝霧が部屋にやってきた。
「うまそうにできてるじゃん」
「あんたのために作ってあげたんだから。感謝してよ」
1番役に立っていなかったはずの杏璃が、えらそうに腰に手をあてた。朝霧はソファに座りながら、「ありがとな」と苦笑した。
壁にかかった時計を見ると、ちょうど七時をまわったところだった。4人でテーブルを囲んで、早速食事を開始した。こんなに大勢で食事をするのは何年ぶりだろう。へんてこな組み合わせに、隆也は心の中で笑った。
ロールキャベツを食べる朝霧を、杏璃はそわそわとのぞき込んだ。
「どう?」
「おいしいよ」
朝霧が優しく微笑むと、杏璃もほっとしたように笑い返した。朝霧の隣に座る白雪も、心なしか嬉しそうだ。
ロールキャベツを一口かじると、確かにおいしかった。隆也が最後に味を整えたのもあるが、きっとそれだけではないのだろう。白雪と杏璃が一生懸命作った結果だ。そういえば母が死んでから、ろくに食事を取っていなかった。食べ逃した分を埋めるように、隆也はご飯を口にかき込んだ。
作るのは苦労したのに、30分もせずに食べ終わった。白雪と杏璃は楽しそうに話しながら、肩を並べて洗い物をした。
「……なんか、仲よくなったな、あのふたり」
ふたりの様子を見ながら、隆也がぽつりとつぶやいた。さっきまであんなに文句を言っていたのに。まるで姉妹のようだ。
「あの子、ふしぎな子だな。年のわりに落ち着いてるし、人間離れしてるっていうか……」
「そりゃあ、変わってるさ。人間じゃ、ないからな」
「え?」
隆也は驚いて朝霧の方を振り向いた。
「それ、どういう……」
「片づけ、終わったよ」
ちょうどその時、杏璃と白雪がキッチンから戻ってきた。
「ありがとさん」
隆也の質問を振り切るように、朝霧がソファから立ち上がった。
「じゃ、早速始めようか」
「何を?」
杏璃が首を傾げる。朝霧は部屋の扉を開きながら、肩越しに振り向いた。
「知りたいんだろ、殺し方」
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