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「ねぇ、紫苑ってどんな人なの?」
ジュースを飲みながら尋ねると、白雪がゆっくりと顔を上げた。
「優しい人です。とても」
それから、少し考えて、
「……優しくて、弱い人です」
弱いとは、どういう意味なのだろう。そう思いながらも、それ以上聞いてはいけないような気がした。
「素敵な人なんだね」
ぎこちなく笑ってそう言うと、白雪は嬉しそうにうなずいた。足をぶらぶらさせながら、上機嫌にジュースを飲む。こうして見ていると、普段の神秘めいた雰囲気は少しもない。どこにでもいる、普通の少女だ。
「神狩は?」
「えっ?」
「神狩は誰を思って作るんですか」
「私? 私はぁ……漣に!」
「……さざなみ?」
その瞬間、白雪の青い瞳が大きくなった。
「うん。幼なじみでね、小さい頃からだいすきなの。すごくお世話になってるの。だから、漣に食べてほしいな……」
言葉にしたら、少し照れくさくなった。アップルパイを食べる漣を想像しただけで、心にぽっと火が灯る。
「そう、ですか」
白雪は小さくうなずいて、手元にあるコップに視線を落とした。それが何を意味するのか、この時神狩は気づかなかった。
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