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『確かに伝えましたから……あとはわかっていますよね? それじゃあ、失礼します』って菜奈は一方的に電話を切ったんだ。拍子抜けした気分になったけれど、直ぐにパソコンに向き直った。それ所じゃなかったからな。調べたらスペインの首都マドリード空港行きが東京から直行便が出ていた。恐らく理帆はこの便に乗るんだろう。  さあ、目途は立った。それじゃあ、俺はどうする? 空港まで行って仮に理帆に会いに行った所で何をする? そもそも会えるかどうかわからない。それに今日はこの後、来客アポイントがある。その後には決済が控えていた。この状況をどう処理すればいい?   一先ず、理帆の携帯に電話をしたよ。そうしたら繋がりやしない。留守番電話にすらつながらない状態。ドラマとかでも大抵こういう場面では連絡がつかないんだよな。まさにそんな状況だった。それで主人公が困っている時に鶴の一声が聞こえてくるんだ。 「早く行きなさい。あとの事は私達が引き継ぐから」って親父からの助け舟と「理帆ちゃんに会いに行くんでしょ?」って母親からの救いの言葉。ここまで言われたら主人公として行かない理由がないよな? まして前社長の親父と支えてきた母親が言うんだ。  小難しい事を考える事は、もう止めたよ。自分の感情が赴くままに動いて恥をかいたっていいじゃないか。偏見の目に晒されてもいい。何が正しくて、何が間違っているかで判断するんじゃなくて、何が大事で、何を失ってはいけない事なのかで感じ取る事が人生において、もっとも重要だってさ。答えが出ると直ぐに店を出て、理帆に会いに行ったんだ。
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