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時々、人生はあみだくじのようだって思う時があるんだ。今までどんなに辛い事や努力を重ねた所で、たった一回の選択肢を間違えると望んでいた結果を得る事はない。例え、望んでいた結果ではなくても、辿り着いた結果が時として功を奏する時だってある。思わぬ心境の変化や出会いで新しい道が開けた時は心が躍るんだ。
理帆との出会いがまさにそうだったよ。俺の生きる道に華を添えてくれた。理帆は部屋を探しに奈菜と店に突然来たんだ。最初の印象はなんだか暗い印象だったよ。口数は少ないし、不愛想にも見えた。部屋探しの条件とか聞き出す時の窓口は菜奈だったし、奈菜が理帆に話を振っても、素っ気ない返事ばかりでさ。見たい物件が決まっているみたいだったから、準備を始めて近くの物件に連れて行ったんだ。
理帆と奈菜は見た目が真逆でさ、寒い季節なのに黒のホットパンツに白いセーターとコート。髪も茶髪でいかにも細身のギャル。理帆は全体的にフェミニンな女性らしい服装で俺としては理帆の方が好みだったよ。理知的な印象もあったな、大きな両目には寂しさが滲んでいたよ。
俺って突発的な仕事が本当に嫌いでさ。客側からしたら、大した事がないように見えるだろうけど、こっちとしては一日の仕事の段取りを組んでいるわけだよ。それが一つでも崩れると全て後ろにずらさなきゃいけない。突発的な物件の案内をしたら一日の仕事リズムを取り戻す事は不可能なんだよ。それでも表面上には態度を示さないのがプロだよな。きっちり二人を案内したよ。
理帆達は最初に見た二LDKの賃貸マンションを気に入って帰って行った。確かに三件の中でも人気の八階建マンションでさ、オートロック付きだし防犯の事を考えても二人にとってはいいかも知れない。
そうしたら後日、理帆から連絡があって、今度は両親達を連れて物件を見たいって言うんだ。今度はちゃんとアポを取ってきたよ。こうした展開の話しはあまり気乗りしなくてね。通常なら決定権者の両親が娘を心配して物件を見に来る事は、賃貸に限らず売買でもあるんだけど、話が好転する事は極端に少ないんだ。大抵は両親から物件のダメ出しばかりでさ、ああでもない、こうでもないって否定ばかりをして、一体こいつは何しにきたんだって常々思うよ。それで娘達のテンションが下がって、話は流れる。こんな展開を当日まで浮かべていたんだ。
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