カリヨンの鐘

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　最後のフロアには、今もスペインで工事をしている未完成の教会の写真と大きな模型が展示されていてね、見惚れていたの。なんて美しいんだろうって。完成には数十年かかるって言われている教会よ。一つ一つの装飾と煌びやかな空間と完成をイメージしたパースには息を飲んだわ。

　両親の影響で世界が遠くに感じなかったの。旅行に行っていろんな世界遺産や建造物を見てきた。人間の可能性を感じ、世界史を学ぶに連れて、より建築に惹かれていく自分がいてね。将来像を描き始めたが高校生くらい。それで大学では建築学科を専攻したの。

　次第に見ているといろいろと懺悔したくなってきてね。合掌して両目を閉じたの。夕飯を食べて、そのままお風呂に入らないでソファーで寝ちゃってごめんなさい。ＳＮＳに自撮り写真をやたら投稿している、あざとい女の悪口を言ってごめんなさい。他にも懺悔は尽きなかったわ。

　時間にして一分くらい懺悔していたのかな。両目を開けて一息ついて帰ろうと踵を返した時に、視界に見た事あるシルエットが入ってね。私から少し離れた所に私と同じように教会の写真に向かってお祈りしているスーツ姿の男性が立っていたの。直ぐに男性の正体が健人だってわかった。わかった途端、どうしてこんな所にいるの、どうしてお祈りしているのって次々と疑問が湧いて来るから私、プチパニックを起こしちゃってその場であたふたしちゃってね。それでもお祈りをしている健人に声をかけるのは、流石に気が引けるから終わるまで待っている事にした。

　偶然の再会に全身に幸せが駆け巡ったわ。話してもいないのに、健人を見ただけでこんな気持ちになるなんて私、どれだけ好きなんだろうって。そんな事、健人に話したら引かれちゃうから今のは内緒ね。

　それで健人のお祈りは思ったより長くてね、十分近くは経っていたと思うわ。あまりにも長かったから健人が懺悔したい事ってどんな内容なんだろうって疑問が湧いたけれど、そんな事を聞くって野暮すぎるなって。神様の前では御法度な気がしたの。

「……こんばんは」って健人の目が開くと恐る恐る声をかけた。健人は私の顔を見て驚いていたわ。そんなに驚かなくてもいいでしょって思うくらいオーバーリアクションだったんだけど、私の方だって健人がいる事に驚いたんだから。