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 人生の答え合わせって、難しいよね?  何が正しくて、何が間違っているのか。自分が進んだこの道は、正解なのだろうか。進まないとわからない道を、どきどきしながら手探りの状態で歩き続けないといけない。そもそも、正解が不正解かなんて誰もわからないでしょ? だから日々の生活が、毎日が面白いって思えるような人生を送りたいなって常々想うようにしているの。  高校を卒業して大学に入学する時から、ずっと両親に一人暮らしをしたいって相談していたんだけど、なかなか首を縦に振らなくてね。大義名分があってとか、実家暮らしが嫌になったとかそういう訳じゃないわ。両親の事は好きだし、尊敬もしている。勉強に厳しい訳じゃなかったし、習い事は強制じゃなくて私が興味を持ったピアノだけを習わせてくれた。両親には感謝をしているわ。  だから一人暮らしをしたいって両親に相談をして、断られた時は驚いたの。どうせいつものように、両親は私の意見を尊重してくれるって高を括っていた訳。ところがどっこい、私が切り出したら猛反対よ。訳を尋ねたら、一人娘を一人暮らしさせるのが心配だったみたい。機嫌が良さそうな時に相談をしても、父親は急に不機嫌になるし、それを宥める母親の光景を何回見た事やら。  半年くらい時間をかけて交渉した結果、幼馴染の奈菜とシェアハウスならって渋々納得してくれたわ。私はついに両親が折れてくれたかって思ったんだけど、ちょっとした裏話があってね。どうやら私の知らない所で、両親が奈菜の両親と話を進めていたの。  その事で奈菜に連絡したら乗り気だったわ。同じ大学に通っているし、奈菜とならいいかなって。奈菜には悪いけれど、本音は一人暮らしが良かったの。いくら仲が良いからって、やっぱり同じ屋根の下で暮らすのはお互い気を遣うでしょ? ただ親の援助も欲しかったから仕方なかったわね。まるで試合には勝ったけど、勝負に負けたって感じかな。  二十歳になる年って、すごく繊細で特別な年だと思うの。未成年と成年の境目の年。成人になれば今まで出来なかった事が出来る様になるし、世間の見方も変わって来る。何も経験を積まなければ、あっという間に成人枠に放られて痛い目に遭うんじゃないかなとか不安を覚えた時もあったわ。要は何が言いたいかって言うと、経験を積みたかったの。何でも良かったわ。車の免許を取って安い軽自動車を買うのも良かった。ただ一人暮らしの方が意識改革出来ると思っただけ。環境を変えれば、何か新しい事と出会えて、必然的に経験する事になる。その経験が将来の糧になるだろうなって漠然とした考えだけが先行していたの。
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