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「なんとなく、おじさんは嫌だよね」
先週、奈菜が私の家に来て、チョコチップメロンパンを片手にスマホを見ながらベッドに横になって呟いたの。
「どうして?」って尋ねたら、体を起こして私を見ながら「だって、可愛くて可憐な女子大生二人が住む所を、顔面が脂ギトギトで腹が出ている薄毛の眼鏡をかけた、おデブさんに案内されたくないじゃない?」って偏見極まりない主張をしたわ。
「……随分、限定した主張だね」
「私は嫌だな、せっかくならイケメンがいいな。私達よりちょっと年上の清潔感ある人」って言うと、また横になってスマホの画面と睨めっこ。
「若い人だと、新人が多そうじゃない? 私は安心して任せられる人がいいなって」
「じゃあ理帆は、イケメンのベテランがいいって事で―――」
「イケメンとは言ってないでしょ?」って言い返した瞬間、奈菜が突然ベッドから飛び上がったの。そうしたら「この人、どう? イケメンじゃない? しかも役職見たら取締役よ?」ってスマホの画面を向けてきてね。スマホに映し出されていたのは桜木不動産の取締役、桜木健人の顔写真だった。私の感想を待たずにすっかり奈菜は機嫌が良くなってね、もう話の流れから、桜木不動産で決まりだった。
「いるかなー、取締役」って駅を降りて桜木不動産の看板が見えると、奈菜がにやにやしながら言うの。すっかり奈菜の中では物件を見に行くより桜木健人に意識が向いていた。
「理帆だって、会うの楽しみなんでしょ?」
理帆が人差し指で私の肩を突っ突きながら小馬鹿にした調子で言ってきたから「そう言えば奈菜、予約してくれた?」って話を逸らしたわ。そうしたら奈菜の頭の上にクエスチョンマークが見えてね、なんだか嫌な予感がしたの。
「だって……その取締役? 突然訪ねたからっているとは限らないでしょ?」
「……行けばわかるさ」って奈菜が歩き出して、店に入って行っちゃった訳。仕方なく私も奈菜を追ったわ。
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