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「申し訳ございませんでした」  健人との距離が五十メートルくらいまで近づいた所で、健人がもう一度二人に謝っていたの。見た目は中年くらいで私の両親と同じ歳くらいの男女だった。二人共、土下座をしている健人をただ悲しそうな目で見降ろして立っているだけ。  目の前の構図を見て、そこで何となくこの二人は麻衣さんの両親じゃないかって考えが思い浮かんだの。その瞬間、土下座をしている健人の横に走っていって、目の前の二人に土下座をしたわ。 「お願いです。健人を……健人を許してあげて下さい」  無意識に体が動いたの。本能って言えばいいのかな。額と両手、両足を冷たいアスファルトに着けた瞬間、悲鳴を上げそうになったけど、健人の為になるならって思ったら我慢出来たわ。 「……何しているんだ、お前?」って健人が私の体を支えて立ち上げようとしたの。だけど健人の両手を振り払って、もう一度二人に頭を下げたの。 「健人は苦しんでいます。大切な娘様が亡くなった事は、お悔やみ申し上げます。ですが、娘様が亡くなった直接の原因は健人にありません。交通事故だって聞いています。ですから、もうこれ以上……これ以上、健人を苦しめないであげて下さい」  通り過ぎて行く歩行者なんて、気にならなかった。嗚咽混じりで泣き叫び、土下座をして訴える絵面がどれだけ惨めで、どれだけ自尊心に傷がつこうが構わなかったの。健人の力になれるならって思ったら必死だった。 「余計な真似をするなよ、お前。これは俺の―――」  また健人が私を立たせようとするから健人の頬を引っ叩いたわ。 「なに勝手に一人で抱え込んで格好つけているの? ばっかじゃない?」って立ち上がった健人の顔を正面に捉えて言ってやったわ。 「これは俺の問題だ。お前がどうこう―――」 「これが私達の別れた理由なんでしょ?」 「それは―――」  「……失礼ですが、あなたは?」って男性の声がしてね。振り返った瞬間、男性が私の顔を見て一瞬目が大きくなったの。隣に立っている女性も口許を手で押さえて驚いている様子だった。
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