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 その為に多様性って言葉があるんだよな。幅広く求められる、受け入れられる社会にする為にお偉いさん達が日々、頑張っている訳だがそれには時間と労力がかかる訳でさ。  時代がその価値観に追いついて社会が形成されるまで俺が生きているか? 生きていたとしても、凝り固まった固定観念を持った人生の八割が過ぎている老人になっているだろうよ。  結局は自分の人生において、何が正しくて、何を信じられるかを判断するのは自分って事。もうこれは普遍的な考えだよな。要は、自己責任って事だ。成功したら俺の力だし、失敗したら力不足。至極、簡単な結論だよ。一本、大樹のように筋を通った自分の考えを持ちながら、枝葉のように臨機応変に対応し、本幹に戻って人生を生きていく。  例え上手くいかないからって不貞腐れず、世の中を舐め腐って見るなって。どんな経緯があるにせよ、誰かに裏切られようが、騙されようが、それは俺が悪いって決めつけていた。だから麻衣の事だって俺が悪いって決めつけていた。あの時、俺が誘わなければ。あの時、俺が携帯に気を取られていなければってね。  そんな考えで今まで生きてきたんだ。悪くはないだろう? 今でもその考えは間違っていないと思うし、男として胸を張って生きていける自信があるんだ。  でも本音を言えば、寂しかったよ。誰かに認めてもらいたいし、誰かに縋りたい。誰かに愛されたいし、誰かを愛したい。もっと人間臭くなって、素直に生きていきたい。そう思わせてくれたのが理帆だった。
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