三つ指ついて?

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 確か年末に電気とガスが止められたという話をめそめそとしていたから、ひとまず家に来たらいい、と伝えた。毎度どうしようもなくなって最終的には転がり込んでくるのだから、それが早いか遅いかの違いだけだ。けれど、その段階では瑞希は首を縦には振らなかった。  俺は瑞希に好意を持っているため、頼られるのは嫌じゃない。どちらかといえば大歓迎だ。どうでも良い奴にたかられるのは冗談じゃないが、瑞希は一緒にいても苦じゃないし、できることなら四六時中一緒に居たい。恋愛感情として瑞希のことが好きだった。  ライフラインが止められて転がり込んでくるのを繰り返す瑞希。もうほとんどうちで暮らしてるようなものだし、このままここに住んでしまえば良いのに。  そう何度も口にしようとしたが、必死に胸に押し込めてきた。瑞希と付き合っている訳ではなかったし、何度も鍵を渡そうとしたけど拒否されてきた。だから、瑞希にそんな気はないんだと思っている。口に出せば今までの関係もすべて壊れてしまいそうな気がして、変なところで臆病な俺は、肝心な言葉を言えずに口籠もる。  軽い失望の溜息を吐いた時、玄関で音がした。  俺はアルコールランプを消し、珈琲がフラスコに落ちていくのを確認すると玄関へ向かう。扉を開ければ、申し訳なさそうな顔をした瑞希が居た。 「二回目だけど、明けましておめでとう。どうぞ?」 「冬馬……悪ぃ。その……」
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