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振り返り、少し震えてた瑞希の手を俺はきゅっと両手で握りしめる。なんで泣きそうになってんのかな、この可愛らしい生き物は。
バンド関係以外のことでは抜けてて、生活能力皆無。自分の外見には無頓着で、はっきりとものを言うくせに、心を傷付けるのとか他人に迷惑をかけるのを嫌っててとても傷つきやすい人。本当に小さな幸せで喜べる人。他人のことで喜べる人。
そんなとこが好きなんだ。
別に外見で好きになったんじゃないし、俺だけが瑞希を可愛いと思ってればいいんだ。皆は、化粧して着飾ってる『シズ』を好きでいればいい。
なんだか愛しさが溢れて止まらない。あぁ、もう勢いに任せてずっと言えなかった言葉をこのまま言っても良いかな。
だってこの人のことが、好きで好きでたまらない。頼ってくれたのが嬉しくてたまらない。ありがとう、っていう一言が嬉しくてたまらない。
「だからいつも言ってるんだけど、アンタには聞こえてないのかな? 全然迷惑じゃないって。それに毎回ここに押しかけるのが迷惑だって思ってるなら、ここに住めばいい。ここを瑞希の帰る家にすればいいでしょ」
俺の体温で少し温まった手を引き寄せて、俺より少し背の低い瑞希を抱きしめた。耳元で、好きだよ、と囁いて肩口に顔を埋める。
ねぇ、瑞希はどう答える?
開き直った俺は強いよ。強いけど、瑞希の返答にはドキドキする。俺の自惚れじゃなくて、
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