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本当に俺のことを好きだったらいいのに。
「えっ……? あ、あの……冬馬さん……? 今なんて?」
狼狽えながら俺の腕の中で呟く瑞希を、全力でからかいたくなる。だから、くつくつと笑いながらもう一度耳元で囁いてやった。
「そんなに何回も聞きたいの? 別に何回でも言うけど……好きだよ」
とっておきの甘い声で。
「っ………! それ、反則だ」
「何が? 俺ね、自分の武器だと思えるものはなんでも使うよ。アンタのためなら」
当たり前じゃないか。どうしても手に入れたいんだから。形振り構っていられない。俺の声が好きだってことも把握済み。だって、瑞希は俺の声に惚れて声かけてきたんだもんね。俺は最高の武器を最高のタイミングで使う。
あんなに頑なに一緒に住むことを拒んでいたから脈はないと思っていたのに、どうやら俺の勘違いだったみたいだ。俺の勘も恋愛ごとに関しては、桁外れに鈍かったらしい。どう見てもこの反応は脈ありだろう。
「すっごい殺し文句。………もう嘘、付けないじゃないか」
「どんな嘘?」
俺の胸に手をついて下を向いた瑞希が、もごもごと告げる言葉に俺の口角が上がる。
「………冬馬とは一緒に住めない。冬馬のことは好きじゃな……」
最後まで言わせないように、その唇を指先で止めた。ハッとしたように顔を上げた瑞希と目があった。
「やっぱりそれ、嘘でも聞きたくない」
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