俺の足跡

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振り向いてはいけない!!!! …………のに。 「ニャーォ」 ………… なんだよ、それ。 こんなに頑張ったのに……。そんな声で鳴かれたら。 俺は心のなかで泣きながら両手を挙げ ついに、向くまいとしていた後ろを、振り向いた。 俺の足跡を必死で追いかけてきた小さな命が、少し距離を取りながらも、つぶらな瞳で俺の顔を見つめていた。 さっきあげてしまった、鰹節の残りをビニール袋から取り出し、掌にのせ視線に合わせてしゃがみこむ。 腕を少し前にやり、それを差し出し、そいつに声をかける。 「おい、お前。この鰹節の貸しは、このあと家に入ったらすぐ返せ。ふたりで一緒に、説得しよう。そうしたら絶対に、温かいストーブと、暖かい毎日が待っているからな。俺とお前との、最初の秘密の約束だ」 「ニャーォ」 俺と、小さな命の未来が重なった。 まるで、俺とこの子の足跡のように。 . fin
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