6人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
振り向いてはいけない!!!!
…………のに。
「ニャーォ」
…………
なんだよ、それ。
こんなに頑張ったのに……。そんな声で鳴かれたら。
俺は心のなかで泣きながら両手を挙げ
ついに、向くまいとしていた後ろを、振り向いた。
俺の足跡を必死で追いかけてきた小さな命が、少し距離を取りながらも、つぶらな瞳で俺の顔を見つめていた。
さっきあげてしまった、鰹節の残りをビニール袋から取り出し、掌にのせ視線に合わせてしゃがみこむ。
腕を少し前にやり、それを差し出し、そいつに声をかける。
「おい、お前。この鰹節の貸しは、このあと家に入ったらすぐ返せ。ふたりで一緒に、説得しよう。そうしたら絶対に、温かいストーブと、暖かい毎日が待っているからな。俺とお前との、最初の秘密の約束だ」
「ニャーォ」
俺と、小さな命の未来が重なった。
まるで、俺とこの子の足跡のように。
.
fin
最初のコメントを投稿しよう!