第1篇② 鑑識眼

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第1篇② 鑑識眼

 今日の季節は春の3月。日差しが眩しく世界を照らして環境が変わる。進学や就職で大きく生活が変わることになったり、暖かくなったので自主的に何かを始める人もいる。大抵の人たちは気持ちが明るくなる。  一方で自殺を考えている暗い人は世間とのギャップでより気持ちが落ち込むことになる。自殺を決行に至らせるほど。  3月は明るい変化の月であると同時に自殺者が最も多い月である。ずっと昔から、海外でも同様の傾向があるほど。月別自殺者ランキングの絶対的チャンピオンだ。  こういうことにちょっとでも興味がある人は知っているんじゃないだろうか。有名な話だ。  そんな3月の今日、男のもとに1つのメッセージが届いた。それを見るとすぐに男は相手が本気の人だと悟った。 「すみませんが、死にます。気にしないでください」  いくらか目星を付けてこちらからコンタクトを取ったうちの1人からだった。最初は優しく自殺をやめるようにメッセージを送るようにしている。そうして本気の人かそうじゃないかを見分けるのだ。  本気の人は自殺をやめるように言うと謝るか無視をする。この趣味を長いこと続けてきて分かったことだ。自分を消そうとしている人は他人と関わろうとしない。口数も少ない。
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