ハニーアップルパンチと友情

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帰る途中にある、レンガ造りのお店が並ぶ通りは私の好きな場所だ。どのお店も可愛らしく、まるで人形の世界に入ったような気分になる。 ふと、横を見るとカフェがあった。だが、 「こんな場所にカフェなんてあったっけ?」 そのカフェは紅色の扉で、看板には猫と文字が書かれている。その文字は 「tea edge……?これって、紅茶の縁っていう意味?」 腐っても高校生だ、流石にこのくらいの英語はわかる。だが、こんなところに今まで紅茶屋さんなんてあっただろうか? だが、外観も可愛くなんだか甘い香りがする。その誘惑はあまりにも強く、逆らえなかった。 ――カランコロン ドアベルが店内に鳴り響く。 店内はカウンターとボックス席があるが、私以外人は誰もいない。いるのはカウンターで太陽の光を浴びてぬくぬくしている黒猫ぐらいだ。 「お店の人いないのかな。」 私の声に気づいたのか、猫が重たそうに首を上げこっちを見る。思わずたじろいたが、そのまま猫は気にせずカウンターの奥に向かった。しばらく店内を眺めてると奥から猫と一人の女性が出てきた。 背は私と同じくらいだが、髪がとても長い。おおよそ腰ぐらいまである髪の毛は緩く弧を描きながらまとまっている。顔は絵に書いたような美人だ。少し眠たげな目と長いまつげ、口と顎は小さく、雪のように白い。 「いらっしゃいませ。カウンターの席でよろしいですか?」 まるで鈴がなったかのようなきれいな声。音は高いが、甲高いわけでもなく澄んだような声。 「あ、ひゃい!」 声が上ずってしまい、変な答え方をしてしまう。もしここに友達がいたのなら、後で確実にいじられていただろう。今は、一人で良かったと思いながらカウンターの席に着く。 しばらくしてあることに気づく。 「あの、メニュー表ってありますか?」 「すいません、当店のメニューは『あなたの紅茶』しかないんです。」 「あなたの紅茶?」 「はい、当店ではお客様のお悩みに合わせて紅茶を提供しています。ご要望に合わせて紅茶を入れるということですね。」 そういうことだったのか。だから、メニュー表はないが紅茶の茶葉はたくさん並べられていたのか。 「お客様は、今日はどういった経緯でこちらに来店したのですか?」 「今日は学校帰りだったんですよ。たまたま見かけて入ってみたんです。にしても悩みか~。やっぱり最近は冷えと肌荒れかな。」 「………そう、ですか。それでは、お作りしますね。」
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