ハニーアップルパンチと友情

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「え……どうして、それを。」 「お客様が来店なされた時、ひどく疲れたようなお顔をしてらっしゃったので、リラックス効果のあるシナモンにしました。」 疲れた顔。 一日完璧な顔をしてたはずなのに、あって数十分しか一緒にいなかった店員さんに見破られた。ものすごく恥ずかしく、同時に悔しかった。 私は完璧でなければいけない、完璧な咲希でなければ。そうでないと、嫌われるかもしれない。嫌われるのが、怖いんだ。 だから、いい顔で真那や美弥たち合わせて笑ってる、合わせて過ごしている。 でもそれって、ほんとに仲良しグループで友情なのかな。 本音をぶつけ合ってこその友情じゃないのかな。 「お客様のニキビの理由はストレスではないでしょうか。」 「ストレス?」 「はい、確かにニキビは生活習慣の乱れで起きやすい肌の病気です。しかし、心理的な理由もニキビに関わってきてるのですよ。」 「そっか、私は完璧な私がストレスだったのか」 そっとうつむき、手のひらを握ってまた開いてを繰り返す。私は完璧でいようとしたけど、それが苦痛だったんだろうな。でも、本当のことを言ったら嫌われてしまうのではないか、色々考えると怖かった。 「お客様は少し考えすぎなのでは無いでしょうか?」 「なんで、だって誰しも嫌われたくないでしょう?女子なんて、いつ気が変わるかわからないもの、完璧でいない限り、嫌われてしまうかもしれないじゃない!」 声が荒らぐ。 確かに考えすぎなのかもしれない。でも考えすにはいられない。そうやって、いじめられるようになった人を何人も見てきたからだ。過去には木刀で殴られいじめられた友人が自殺したことだってある。私がいついじめられるかなんてわからない、だから、常に対策をしなければならないんだ。 「本当に信じているなら、どんなときだってそばに居てくれるものですよ友人というものは。」 猫葉さんは微笑みながらそういった。 その笑顔は、紅茶のように温かくどこかホッとするような顔だった。
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