失われた真実を求めにつき!

11/11
231人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
「ハロルド!ハロルド!キスしましょう!キスを!誰よりも熱く!情熱的なキスで・・・私を・・・あっ・・・あれ?」 「ん?少し力が、弱まったか?」 襲いかかる力が少し弱まったことを察したハロルド様は、奥様の顔を覗き込む。 「意識が戻ったのか?」 「キス・・・キスをしてなんて・・・ハレンチな・・・。なんて浅ましいことを・・・私は願って・・・。」 両手で顔を隠した奥様は、耳まで真っ赤になり俯いてしまう。 「ハロルド様・・・ごめんなさい。わ、私・・・。」 「いいんだ、アーシャ。君は悪くない・・・。」 「それでも、私は・・・。」 ハロルド様はゆっくりと上体を起こすと、奥様を抱きしめる。 落ち着くように背中を撫でると、奥様はハロルド様の首に手を回し、そのまま・・・。 ーちゅ! 唇を奪ってしまった。 「んちゅ・・・!はぁ・・・!」 「んん!?んはっ!し、しまった!まだ、催眠が解け切ってなかったのか!?す、すまない!アーシャ!嫌だったろ!?すぐに濯ぐための水を持ってこさせるから!」 慌てるハロルド様と唇に手を添え俯いた奥様。 その様子を離れて見ていたアンリ様は小さくガッツポーズをすると、奥様の肩に手を置いて立ち上がらせる。 「お母様・・・。」 「アンリ・・・!わ、私・・・!」 「えぇ・・・ふふ!うんうん!しちゃいましたね、キス・・・。」 「っう〜〜///」 アンリ様は真っ赤になって狼狽する奥様に微笑む。 その時、周りの皆は気付いた。 そういう事か、と。 「あぁ!すまない、アーシャ!サカエくん!み、水を持ってきてくれないか!?」 「いやー、いらんでしょ・・・。」 当事者には分かりづらいかもしれないが、周りから見れば一目瞭然だ。 俺は苦笑を浮かべると、観月と天使の背中を押して部屋の外に出ようと促す。 そうと分かれば、この場にいるのは無粋というものだろう。 「さ、サカエくん!?」 「今、必要なのは水でもなんでもなく、二人が素直な気持ちで話し合う時間でしょう。真実は明るみに出ました。あとは、その裏で揺れ動いていた気持ちを確認し合ってください。」 「それはどういう・・・。」 「多くを語るより、まずは真っ直ぐに見つめてくる目の前の女性の手を取ってあげてはどうでしょう。言葉を交え、キスもいいでしょう。貴方をどう思っているのか、それくらいは確認してもいいと思いますけどね?」 「っ・・・!」 目の前を見れば、真っ赤な顔で潤んだ瞳を向けてハロルド様を見つめる奥様の顔があった。まるで、恋をする乙女のような姿に思わずハロルド様も顔を顔を赤らめ俯く。 「ハロルド様・・・。」 「アーシャ・・・。えーっと、なんだ。少し、話さないか?」 「は、はい!」 ハロルド様と奥様が並んでソファに座る姿を確認した俺たちは、そっと部屋をあとにするのだった・・・。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!