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とりあえず、現在地の整理だ。
俺たちは今、王都から遠く離れた場所にいる。
だが、実は闘っていた場所、ディケーナ付近からそう遠くない場所にいた。
ディケーナを横目に通り過ぎ、ナガミ村へ続く街道を囲う林の中を突っ切っている。
道中、フラフラと彷徨いながら、林を進んでいる感じだ。
『(リライア、この先には何があったっけ?)』
リラ▷〈 光ヶ丘 〉ですね。〈 薬草:月の涙 〉の群生地です。
魅玖▶︎薬草を取りに来たんですかね?
『うーん・・・。(それなら、商人とかにお願いすれば済む話の気がするけど・・・。それに横の街道を歩けば楽なのに・・・なんでこんな場所を歩いているんだ?)』
俺たちの進む林の少し横には、月の丘へと続く街道が並行に伸びている。
街道を歩けない理由があったのか?
進めば進むほど、謎は深まるばかりだ。
『誰か、三十年前のこの辺りの地理が分かるヤツはいるか?』
「三十年前か?確か、この辺りはディケーナの街もできて間もない頃だったな。今みたいに大きな街になったのはそれからしばらくした後の話だ。教会を建てるために、何度か視察に来ていたからよく覚えてるよ。」
「そうだったねー。当時は街周辺の整備も進んでなかったから、隣の街道もできてなかったと思うよー。」
大天使ラファとミカエルが当時のことを思い出し、懐かしむように目を細める。
三人の大天使は百年前から美神教を隠れ蓑に裏で暗躍してたんだよな。
『道もなく、こんな薄暗い林の中に女性一人で?いやいや、そんなこと・・・。シルフィ。母親に同行者はいたのか?』
『いないよ。途中で行商人が案内したりしてたみたいだけど、基本的にはずっとお母さん一人でここまで来てたみたい。』
『一人でここまで来たのか!?いやぁ、女性はやっぱり凄いなぁ・・・。』
「ひ、一人でここまで?さすがに何かの間違いでしょう。」
『精霊たちが目撃している。間違いないだろう。しかしここまで、一体何しに・・・。ん?』
ふと、顔をあげると林の終わりが見えてきた。
どうやら、考えて歩みを進めている内に林の反対側まで来たようだ。
日も落ち始め、ただでさえ薄暗い林がさらに薄暗くなり始めていた。
急いだ方が良さそうだと、後方に号令をかけると、皆も同じ思いだったのだろう。
薄暗さの中に潜む何者かの気配から逃れるように、皆が駆け足で林の外へと走り出した。
ー ウオォーン!
ー ウオォーン!
しかし、それが俺たちの周りでつかづ離れずの距離を保っていた魔物を刺激したのだろう。
四方八方からウルフの声が聞こえ始めた。
まるで狩りをするように、周囲を取り囲んだウルフが徐々に距離を詰め、ついには最後尾を走る観月へと飛びかかった。
ー ガフッ!ワゥ!グルル・・・!
ー ワフッ!ガルル・・・!
「シッ!やぁ!もー、無駄に体力遣わせないで欲しいなー。」
観月が偃月刀で飛びかかってくるウルフに応戦したことを皮切りに、次々と縦に伸びた隊列に向けてウルフが飛びかかってくる。
数でいえば、二十と少し。
だが、たかがウルフ程度で窮地に陥ることなどありえなかった。
なんたってメンツは、魔王と凶悪な仲間たちと大天使、熾天使、そして魔人だ。
俺たちは落ち着いた様子で、飛びかかってくるウルフを蹴散らしながら、少しだけ駆け足で林を駆け抜ける。
『よし、そろそろ抜けるぞー。』
ラストスパートをかける俺たちを逃がすまいと、必死に食らいついてくるウルフ。
そんな魔物たちを撫でるように斬り捨てると、次々と林を飛び出していく。
最後に飛び出てきた観月と入れ替わるように、ウルフを殴って林の中へと押し返すと、林のウルフは口惜しげに一鳴きして奥へと戻って行った。
『諦めたか。』
皆、それぞれに武器や身なりの確認を済ませると、目前へ広がる丘へと目を向ける。
一行は〈光ヶ丘〉へと、到着したのだ。
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