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皆で小高い丘を見上げる。
丘の上には一本の大きな木。
今はまだ見えないが、その根元には一面の薬草が生えているだろう。
「まったく、こんなところに何をしに来たんだ?」
『・・・・・・。』
シモンは訝しげな顔で小高い丘を見上げていた。
シルフィに目を向けると、悲しみをたたえた瞳でシモンを見つめている。
『やっぱり、この先に・・・?』
『うん・・・。着いたら話すよ。』
シルフィと共に、薄暗くなってきた丘を上り始める。夜が近い。
木のある場所をおおよその目印として、皆で歩みを進めていると、シルフィはそのまま丘の上の木へと飛んでいってしまった。
姿の見えなくなったシルフィに、自然と足が早くなる。
『・・・シルフィ?』
『ここだよ。』
丘を登りきると、予想通りの光景に出会す。
大きな木。その根元には一面の薬草が風にそよいでいた。
まだ夜になりきっておらず、月が出ていないせいか、薬草はあの独特の青白い光を放ってはいなかった。
薄暗い中、シルフィが示す場所に歩み寄ると、薬草に埋もれるように石がそっと置いてある。
大人がようやく抱えられるほどの大きな石だ。
前回来た時は、全然気付かなかったな。
『この石・・・まさか、お墓なのか?』
「墓ですって・・・?」
俺の呟きが聞こえたのか、シモンと皆が俺の周りに集まる。
皆で観察してみるが少し大きいというだけで、至って普通のただの石だ。
名前が彫ってあるわけでも、なにかが備えてあるわけでもない。
「ここが私の母の眠る場所、ということですか?」
『シルフィはここを示している・・・。だけど、到着してからはシルフィは黙ったままだ。何か伝えたいことがあるが、どう伝えるべきか迷っているような様子だな。』
「ふむ・・・。大精霊シルフィ。どうか、教えてくれませんか?ここで何があったんです?さすがに私もバカではありません。女性が一人でここまでやって来て、ついには命を落とすなど普通では有り得ないことです。彼女に・・・母に何があったんですか?」
『・・・分かった。話すよ。』
シルフィは少しの沈黙の後、今まで精霊たちから集めてきた情報を静かに語り始めた。
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