王都に激震走りにつき!

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しかし、うまい話には裏があるもの。 これだけのヤバいことを重ねて、国を混乱させた天使や美神教(カリテス)に対して、処罰はほぼ無いに等しい。 なんともきな臭い。 「んー?水を差す真似をして申し訳ないんですが・・・少しこの話うま過ぎやしません?というか、天使に甘すぎやしませんか?」 「ふふ・・・。さすが、魔王殿だな。察しの通り、この話には裏がある。実は天使たちを自由にしたのも、美神教(カリテス)を解体しないのも、わけがあるのだ。」 「やっぱりー・・・。」 「えぇー・・・。」 タダでうまい話はないと王は笑うと、早々に契約書を脇に寄せると、別の紙と地図を取り出した。 早速出ました。王様の無茶なお願いシリーズ。 RPGあるある。やっぱり、王様と言えばこれだよね。 「あー・・・どんなことお願いされるのやら。コワイコワイ・・・。」 「ふふ!そう、嫌そうな顔をするな。大丈夫だ。悪いようにはしない。ちょっと、私のお願いを聞いてくれるだけでいいんだ。ただ、どうしても嫌だというのなら・・・。」 と、チラリと脇に置かれた契約書に目を落とす王様。 おぉー・・・優しい顔してこの人、やるもんだね!っと。魔王よりもタチが悪そうだ。 「はぁー・・・。分かりました。天使族の未来のためです。なんなりと、お申し付けください。」 リッツフェルは頭を抱えると、小さく息を吐き、半ば諦めたように性悪王の要求に頷く。 「ふふ!物分りのいい子は好きだよ。しっかり、働いてくれ。その分、天使族の未来は保証しよう。」 「お願いしますよ、本当。」 「ふふ!安心しなさい。手伝ってもらいたいのはこの仕事だけだ。あとは好きにしてもらって構わない。」 王は地図の一点を指差すと、急に真剣な表情になりリッツフェルと天使たちを見回す。 「ディケーナの近くに、〈光ヶ丘〉という丘があるだろう?その奥に行ったことはあるかね?」 「その奥ですか?行商が使用する細道を抜けた先に村があるのは知っています。」 「そうだ。どうも、その村で魔族の目撃情報が入っているのだ。ディケーナの領主に指示を出し、ディケーナのギルドに調査依頼をお願いしたのだが、A級の冒険者を送ったと連絡を受けてから永く連絡が来ない。君たちにその村の調査、並びに魔族がいた場合は対処を願いたい。」 「・・・ギルドか。」 リッツフェルは顎に手を当て考え込むと、俺へと視線を移す・・・。 あ、なんか嫌な予感・・・。 「魔王・・・いや、サカエ殿。」 「いやです。」 「まだ何も行ってないぞ?」 「いやですー。」 「む、むぅ・・・。私は人間の世界に疎いんだ。」 「まぁ、十年近く隔離されてたら、疎くもなるよね・・・。」 「でだ、サカエ殿。ギルドに案内してくれないか・・・?」 「いやでーす。」 「うぅぅ~~・・・!」 ー ぽかぽかぽかぽか・・・! 涙目で俺を見上げると、両手を握りしめて詰め寄って来たかと思えば、軽く殴ってくる。 や、やめてー!アンタ、男でしょ!? 拒絶反応でちゃうから! というか、その黒いウエディングドレスは標準装備なの!? 男なのに、そんなエロチックなドレス着るなよ!無駄にガーター美脚が眩しいなぁ、おい! 「やめ、やめろ!離れろ!蕁麻疹でる!」 「冷たいこと言うなよ~!なんなら、私の身体、好きにしていいからさ?」 「いやいや、お前は男だろ。なぁ!ラファ!お前ら男だよな!?うちの可愛いウリエスちゃんとは、別の生き物だろ!?そんなヤツと契りなんて結べるか!」 腰に擦り寄ってくるリッツフェルの頭を押さえつけ、この中で一番馴染み深いラファエロに助けを求める。 「べ、別の生き物って・・・。ウリエスは女の子って性別に変化しただけで、天使であることは変わりないだろ・・・。」 「別の生き物だ!分かるか!?蛾と蝶くらい、蛇とドラゴンくらい違うからな!」 「「その認識は、ひどい!!」」 俺の説明に天使たちは、ガックリと項垂れる。 しかし、まだ諦めてないリッツフェルはさらにベッタリと俺の身体に抱き着くと、耳元で囁きはじめた。 じ、じんまし〜~ん!! 「なんだ、サカエ殿は女の子が好きなのか?」 「そうだよ!俺は〈 色欲と激情の魔王 〉なの!女の子好きで何が悪いか!」 「そうかー。じゃあ、私が女の子なら、快く協力してくれるわけ、だね?」 「いや、だから、お前は男・・・」 と、ふと、そこで違和感に気付く。 これだけ触れられているのに、蕁麻疹が一切でない。 それに、この気配・・・男というより・・・ウリエスに似た感覚だ・・・。 「って、この流れは、まさか!?」 「ふふ!私は“熾”天使だよ?天使族で最高位の〈 愛と情熱に燃える天使 〉なんだ。“惚れた”相手のためなら、いくらだって・・・姿も・・・性別も変われるよ。・・・聖魔法【 リライト(書き換え) 】!」 「惚れ・・・えっ!?何して、熱っ!?」 リッツフェルが魔法を唱えた瞬間、その身体が光に包まれた。 強烈な眩い光と太陽にも似た熱量を感じ、たまらず離れると、固く目を閉じる。 間近で見ていたら、目を焼かれかねない。 しばらくして、光と熱が落ち着くと目の前には腕を組んだリッツフェルが不敵な笑みを浮かべて立っていた。 「ふふ!〈 この身を焦がすほどの愛と情熱 〉で、私は何度でも生まれ変わるんだ! 」 「・・・うっそー。」 見れば、先程まで胸板があった場所には、ハヤー並のデカメロンが二つ。 ウエーブのかかった長い金糸の髪がフワリと揺れて窓から差す光に輝く。 さらに顔立ちは、先程までのキリッとした顔ではなく、どこか母性を漂わせる大人な女性へと変化していた。 ウリエスよりも分かりやすく女性になったのは、彼女自身の成長年齢の差だろうか? 「ふふ!やっぱり、女の姿の方が落ち着くなぁー・・・。そこの三馬鹿と離れた時に、一人で身を隠すために、男に変化してたんだ。女の身だと、色々と面倒事に巻き込まれやすいしね。」 「あぁ、そういうこと・・・。確かに、それだけ綺麗だとちょっと見かけただけで、変な男がよって来るよな。」 「そうそう。弱いクセに、下心丸出しでねー。そんな男の子供なんか絶対に産みたくないから、さっさと男になったわけ。おかげで、囚われるまでは男は寄ってこずに、女の子にモテモテだったね。でもまぁ、気持ちは女だから手は出さなかったけどね。それで、サカエ殿ぉ~?」 少し伸びた髪を掻き上げ、ニコリと微笑んだリッツフェルは、再び俺の胸に擦り寄ると甘えるような猫なで声で見上げてくる。 「こ、この可愛い天使さんめ・・・!俺が女の子に弱いことをいいことに、女の武器を最大限に使って俺を落とそうって魂胆か!だが。残念だったな!そんな手に、この俺が!魔王が籠絡されると思うなよ!」 「フフ・・・!」 ー ふわっ! 細い!折れそう!白い!肌綺麗!それに、いい匂い!花?シャンプーか? ー ぽよん! やわらか・・・胸!?おぱ!おぱっ!?おっぱぱぱぱー!? 「サカエ殿ぉ~?アタシ~、困ってるんだぁ~?天使たちの長だから、頑張りたいのに~。場所わかんないし~?案内してくれないかな~?」 「そんなの・・・そんなの!!協力させてもらうに決まってるだろ!(キリリッ!)」 「やったぁ~♡ありがと~~!」 「「秒殺かよ!?」」 当然だとイケボで答える俺に、リッツフェルはぴょんぴょんと跳ねながら飛びついてくる。 胸がポヨンポヨンと当たって・・・こちらこそありがとうございます♡ ガブ 「うわぁー・・・。姐さん、性格変わりすぎだろ。」 ラファ「はぁ・・・。女になっただけでこうも簡単に陥落するなよ、魔王ぉ・・・。」 ミラ「ていうか~?あの喋り方、おもしろーい。なんか、危ないことしてる町娘みたーい。」 ガ・ラ「「いや、あれ、お前の真似だろ・・・。」」 ミラ「え~~・・・マジィ?」 それを見ていた天使たちは、少し引いた様子で見ていた。 「むうぅぅーー!サカエく~~ん!?」 「え・・・あ、ミラちゃん?」 「私というものがありながら~!ほかの女の子にデレデレしてぇ~・・・!」 プンスカ!と怒りながら勇者ちゃんが腕に抱き着いてくる。 怒っているようだけど、うるうるとした目が輝いていて、すごく綺麗だ。 「もちろん、ミラにもドキドキしてるよ?ミラちゃん、可愛いよ?大好きだよ~?」 「ほんと?本当に?あの、その・・・リッツフェルより?」 「そりゃ、もちろんミラちゃん最高だよ・・・?」 「ふーん?私よりも勇者がいいんだぁ~?悲しいなぁ?」 反対の手に抱き着くと、ミラから奪うようにリッツフェルが引き寄せる。 子供のように少し拗ねたような顔が、大人の顔とギャップを生み出し可愛く見える。 「か、かわえぇー!」 「むぅー!サカエくん!」 「むぅー!サカエ殿ぉ!」 「「どっちが好き!?」」 「どっちも好き♡」 「「ゆーじゅーふだーん!!」」 ーポヨン!ぎゅーっ! ーぽよん!ギューっ! 「フハハ・・・!優柔不断ではないぞ?慎重なだけだ。ほらほら、もっと俺に抱き着きなさい?もっと、俺のオトコを喜ばせてくれ。判定できないじゃないか~。」 「「むぅ~~!!負けないもん!」」 ー ギュ~~ッ♡♡♡ 奪い合うように綱引きを始める女の子たちを挑発すると、ヒートアップしてきたのか二人は全身を使ったアピール合戦を始めた。 いい匂いはするし、柔らかいし、可愛い声漏れてるし。 ふぅ・・・。まったく、女の子って、最高だぜ!! 揉み合う俺たちを見て、国王ガイウスは小さく苦笑すると、静かに窓に歩み寄り外を眺める。 「あーぁー・・・。久しぶりに燃えるような、恋してぇなぁ・・・。」 「「はぁ!?」」 ぽつりと零れた言葉に、天使たちは素っ頓狂な声をあげて窓辺で項垂れる国王に目を向けるのだった。
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