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こうして、三者での協議は無事終了。
天使たちは、王の恩赦によりお咎めなし。ただし、今後は絶対にそんな独善的な行為は行わないこと、人々の権利を侵害しないことを約束させられた。
また、天使の悪評が広まらないように、関係者はこの事実を秘匿することとした。
つまり・・・この事件の真相はもみ消されたと言っていい。
まぁ、被害者である女性たちが訴えに出なかったことが、一番大きな要因ではないだろうか。
なんともスッキリしない決着だが、歴史上、政を回す上でこうしたこともよくある話なので仕方ないのかもしれない。
ただ、問題の美神教は国王より厳重注意を受けて、清く正しく風通しの良い教団へとなるべく変革を余儀なくされた。
国からの視察が度々入るようになったのは、気が重いだろうが頑張って欲しい。
まぁ、悪い事したんだし、これも仕方がない事だな。
何はともあれ、諸々の条件付きで天使族は権利を獲得。
晴れて自由の身となったのだ。
「シモンはどうなるんだ?明日の調印式には出るのか?」
「シモンは服役を終えるまで帰ってこない。ただ、帰ってきたところで、あの見た目だ。美神教へと戻ることはほぼ不可能と思っていいな。」
「そうか・・・。」
協議が終了して数日。
協議の次の日には、国から【 王都連盟加盟調印式⠀】が行われることが発表された。
王都に激震が走り、まだ見ぬ天使たちの登場に人々は興味津々といった様子だった。
天使の噂で騒がしい街を美神教の屋根の上から、ラファエロとミカエル、ガブリエル、そして俺、栄咲遊助が眺めている。
明日行われる、連盟加盟の調印式に誰が参加するかで意見を聞こうと足を運んだのだが、三人ともリッツフェルを差し置いてできないと首を振るばかり。
結局、このまま天使族の代表者はリッツフェルということで、決定することになりそうだった。
「明日の調印式には、天使たちが全員参加だからな。お前たちも、天使の名前に恥じない厳かな格好をするんだぞ。最初の印象が大切なんだからな。」
「分かってるよ。」
「ちなみに・・・お前の手にあるそれはなんだ?」
「ん?調印式の日に、天使たちに着せようと思っている正装だ。お前らどうせ持っていないだろうから、俺が特別に用意しておいたんだ。有難く思えよ。」
「準備がいいな・・・。」
「当たり前だ。大事な仲間の門出だぞ?何もなしで送り出すわけないだろう。」
「はは・・・仲間か・・・。不思議な感覚だな。」
ラファエロ、ガブリエル、ミカエルにそれぞれ衣装を渡していく。
俺の世界では、天使達にオーラカラーがある。それをイメージして今回の衣装は作ってあった。
ラファエロはエメラルドグリーン。
ガブリエルは銅色。
ミカエルは紫である。
ラ「お、好きな色だ。」
ガ「オレも。」
ミ「うん!センスいいねー!・・・ところで、魔王さーん?これー、何?」
「見て分からないか?マイクロビキニだよ。」
「「そんなことだろうと思ったよ!!」」
ーポイッ!ポイッ!ポーーイッ!
「あぁ!?ひどい!」
天使たちは予想通りの回答に、目尻を釣り上げると、ビキニを丸めて屋根から投げ捨てる。
ヒラヒラと風に遊ばれ、ビキニは何処か物陰に隠れてしまった。
「あーぁ。天使のイメージ一新できるチャンスだったのに・・・。」
「一新どころか、イメージ劣化してんだろうが!!」
「ファーストインパクトは、バッチリだと思うけどなー?」
「インパクトは強烈だろうよ!初対面の相手が、ほぼ真っ裸だったら、誰だって印象残るよ!むしろ、忘れられないだろうよ!ていうか、イメージがた崩れだよ!」
「せ、せめて、みんなのイメージは大切にしてあげたいみたいなー?あんな際どい格好だと、逆に申し訳なくなるしー。」
「というか、単純に変態だよ。変態扱いされるよ!変態天使爆誕だよ!」
「禊だよ。禊。あえて言葉にできないほど恥ずかしい格好になって、反省してるアピールだ。」
「むしろ、反感買うわ!ふざけてるって、思われるだろ!却下だ!却下!」
格好の意図を示しても、断固として譲らなかった。
「いいと思ったんだけどなぁー。」
「ハレンチ魔王め・・・。」
「勘違いすんなよ?お前たちは性別上“男”だ。俺のセンサーには全く引っかからん。単なる嫌がらせだ。ルーシーたんやウリエスちゃんなら、歓喜して即ベッド・インだけどな。」
「ま、まさか、姐さんやウリエスにも送ったのか・・・?」
「おぅ!その日は盛り上がったぜ!」
昨晩、同じ流れでマイクロビキニを手渡し、褒め殺したらいい雰囲気になったので、そのまま二人とも美味しく頂いた。
ルーシーとはリッツフェルの本名、ルシファーから文字ったものだ。
ちなみに、ルーシーにはイメージカラー“黒”を、ウリエスにはイメージカラー“ペールイエロー”のマイクロビキニを贈った。
二人とも可愛かったなぁー。
「あ、姐さん・・・惚れたってマジだったのか・・・。」
「昔から強い男に飢えてたもんねー・・・。オレたちの性別が“男”になったのも、子供ながらに“姐さんに惚れられる男になる!”って、決意のせいだったもんねー・・・。」
「でも、大人になって分かる現実もあるよな・・・。」
「うん・・・。」
「「彼女に勝てるヤツなんて化け物しかいねー・・・。」」
大天使たちはガックリと項垂れると、ジト目で俺を見つめてくる。
女の子の視線なら、俺も嬉しいが野郎の嫉妬の目は不快でしかありませんわな。
「おー?下克上か?よっしゃ、来い!いつでも相手になってやるぜ!」
拳を打ち鳴らすと、俺は口角を上げて大天使を見回す。
「いやいや、無理だから・・・。」
「お前の強さが異常なのは十分わかってるから・・・。」
「まぁ、魔王なら納得?みたいな?なんか、イメージ的にも、ルシファー姐さんと魔王って、なんだかしっくりくるし・・・。なんでかわかんないけど・・・。」
まぁ、ルシファーは俺の世界じゃ、魔王だしね・・・。
「ちぇー・・・。つまらん。」
俺は口を尖らせてボヤくと、街に振り返る。
「んじゃ、気になってることいいか?実際、薬草届けてたの誰よ。」
「薬草・・・?」
「〈月の雫〉だよ。シモンに薬草届けてたのって、この三人の中の誰かだと思ってるんだけど?」
教会に居て、尚且つ、最短で薬草を届けられる方法を考えた時に一番可能性が高いのは、“飛行”だ。
空なら悪路もモンスターも比較的少ない。
全力で飛ばせば、天使の速さに着いてこれるのはドラゴンやワイバーンくらいなもんだろ。
それもコイツらの強さなら、何とか躱すことも可能なはずだ。
「・・・オレだよ。」
「だと思ったわ。」
しばらくの沈黙の後、ガブリエルが手を挙げ小さく息を吐いて名乗り出た・・・。
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