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俺の激怒が火を噴くカウントダウンを始めた時だった。
「あぁっ!さーーーかーーーえーーーくーーーんーーー!!!」
「え?あ、ミラくんか。一昨日ぶり~~。」
ー ドオオォーーーン!!
周りの連中が遠巻きで見ている中、その間を突っ切るように、はるか廊下の先から人間バズーカならぬ勇者ミラウェイドが突っ込んできた。
勢いそのままに飛んできたミラを抱きとめると、お姫様抱っこするような格好になって、思わず二人とも苦笑してしまった。
「はは!しまった。会えた嬉しさで勢い殺し損ねたよねー。」
「危ない危ない。怪我したら大変だぞ?女の子なんだから、気をつけないと。」
「ふふ!王都で当たり前に女の子扱いしてくれるの、サカエくんだけだよー。大好き〜~♡」
ー ギューー!!
観月たちも慣れたのか、苦笑しながら眺めている。うちの奥さんたちは心が広い。
めいいっぱい抱きつくと一通り満足したのか、腕から降りる。そのまま俺たちを見回して首を傾げた 。
「みんな到着早かったね。式の一日前に来ると想ってたよ。」
「ん。天使たちを連れてきたのと、大天使たちとちょっと話をね。調印式は天使族の晴れ舞台だからさ。準備万端にしときたくて。あと、奥さんたちのドレスの最終調整かな。もちろん、ミラちゃんのドレス姿も期待してるぞ?」
「・・・人類最強の名に恥じない見事な着こなしをしてみせるね!って言いたいところだけど、調印式ではドレスは着ないんだー。一応、勇者の正装は戦闘の時に見せた甲冑だから。ドレスを着るのは、式の後の記念パーティの時かな。」
「戦闘の服も好きだぞ?この背中空きの無防備な背中とか、眩しい太ももとか・・・。」
「も、もう!・・・本当、エッチだね、キミは。そういうとこ、好きだけど・・・ゴニョニョ・・・。」
「ふふ!また、続きは夜にね。」
「う、うん!夜・・・///っと、そうだった!パーティメンバーと調印式の警備の話するんだった!それじゃ!サカエくん!また夜ね♡」
「あぁ!」
走り去る勇者に、軽く手を挙げて見送る。
ーざわざわ・・・!
すると、周りの視線に明らかに変化が生まれた。疎ましそうな視線から一変。
疑念や戸惑いの視線に変わっていた。
あ、そうか。ここの人達、ミラが俺の奥さんなの知らないのか?
というか、ミラが女の子なのすら知らない人もいるかもしれない。
「あ、あの・・・。すまないが、勇者様とはどういったご関係で?」
「え?ミラは俺の妻ですけど、何か?」
「「 妻っっっ!!? 」」
ー バタン!
恐る恐るといった様子で話しかけてきた貴族風の男性に含みもなく、素っ気なく答える。
皆、絶叫し目を丸め、何人か(主に夫人たちやお嬢様)が卒倒した・・・。
白目むいて、泡吹いてる。
オモシロ可愛いな。
そういえば、勇者ミラウェイドって、女性に大人気なんだよな。そりゃ・・・あんな可愛い系男子が勇者だったら応援もしたくなるってもんか。
まぁ、今は可愛い系“女子”で、俺の奥さんだけどね!
「 (ドヤァァ!!) 」
「どこ見てんの、ユーちゃん・・・。」
ドヤ顔で明後日の方を向くと、観月が苦笑を浮かべてツッコミを入れてくる。
いや、だってねー。王都貴族って、あんまり良い印象ないんだもの。さっきも、邪な目で観月たち見てたし。
ちょっとくらい、ねぇ?と思う俺は別に悪くないと思う。
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