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俺のドヤ顔がムカついてきた観月の〈 みつきっく! 〉が炸裂するカウントダウンが始まった時だった。
「あぁっ!さーーーかーーーえーーーどのーーー!!!」
「え?あ、ルーシーか。一昨日ぶり~~って、またか!?」
ー びゅーーーん!どーーーん!
周りの連中が遠巻きで見ている中、その間を突っ切るように、はるか廊下の先から天使ミサイルならぬ熾天使リッツフェル(女に戻ってからはルシファーと名乗っている)が突っ込んできた。
勢いそのままに飛んできたをルーシーを抱きとめる。ミラのようにお姫様抱っこにはならなかったが、勢いがよかったために押し倒される形になってしまった。
怪我はないかと、ルーシーの身体を確かめると心配されたことが嬉しかったのか、照れながら立ち上がる。
「あ、あはは!やっば。会えた嬉しさで勢い増しちゃった~。」
「勢い殺すどころか、増したのか。でも、怪我したら危ないからな?女の子なんだから、気をつけないと。」
「ふふ!熾天使の私を当たり前に女の子扱いしてくれる、貴方が大好き〜~♡」
ー ギューー!!
観月たちは呆れながら、俺たちを眺めている。うちの奥さんたちは心が広い、のか?
めいいっぱい抱きつくと一通り満足したのか、ルーシーは俺に抱きつきながら、皆を見回す。
「観月たち、今日暇?少し街ぶらつこうよ!美味い料理屋が沢山あるんだ!」
「料理!?うんうん!いいよ!美味しいもの食べたい!」
「そんじゃ決まりね!大天使連れて、部屋行くわ!っと、その前に姫様に呼ばれてるんだった。ちょっと先に、雑用こなしてくるよ!また後でね!」
「うん!」
走り去る熾天使に、軽く手を挙げて再び見送る。
ーざわざわ・・・!
すると、周りの視線がさらに変化した。
疑念や戸惑いの視線から一変。
羨望の眼差しに変わっていた。
あ、そうか。ここの人達には、ルーシーの正体は事前に知らされてるのか。
だけど、彼らはさすがに知らないのだろう・・・。
「あ、あの・・・。熾天使様とはどういったご関係で?」
「え?ルシファーは俺の妻ですけど、何か?」
「「 つうぅーまあぁー・・・・・・!! 」」
ー バタン!
再び、恐る恐るといった様子で話しかけてきた貴族風の男性に同じように、素っ気なく答える。
皆、絶叫し目を丸め、何人か(男ども)が卒倒した・・・。
白目むいて泡吹いてる。
こりゃ愉快だな。
そういえば、熾天使って男性に人気なんだよな。女神信仰の陰で、天使信仰もあるくらい。まぁ、あんな強力な力を持った天使だったらも崇拝したくなるってもんか。
信仰の元は旧大戦の際に活躍した軍神がモデルとか。
言わずもがな、それはルーシーのことだったりする。
まぁ、今は綺麗な“天使お姉さん”で、俺の奥さんだけどね!
「 (ドヤァァ!!) 」
「ウザいよ、ユーちゃん・・・。」
ドヤ顔で明後日の方を向くと、観月が苦笑を浮かべてツッコミを入れてくる。
いや、だってねー。ちょっとくらい、ねぇ?自慢しても良くない?と思う俺は別に悪くないと思う。
その後も、ワルフォイ様やギルマスやら、国王やらが話しかけてくるもんだから、気付けば周りは死屍累々と化していた。
「もぅ・・・みんな、こんなところで寝ちゃって・・・。風邪ひくぞ?」
「あはは・・・それじゃ、私たちも部屋に行こうよ。王様が客室用意してくれたんだって!」
「そだな。それでは皆さん、ごきげんよう。調印式で会いましょう。」
俺たちは屍と化した皆さんに、恭しく頭を垂れると、奥さんたちを連れて案内のメイドさんの後に続いて歩き出した。
それからというもの、調印式が始まる今の今まで、沢山の貴族たちに挨拶やらなんやらで絡まれて今に至るわけだ。
「式が始まる前から、もうクタクタだ・・・。」
俺は苦笑を浮かべて、用意された席からチラリと背後を振り返ると、沢山の貴族や兵たちの視線が一同にこちらを向いてることに思わずため息を吐く。
なんだ、そのキラキラと期待と羨望に満ちた目は。
あの疎むような目はどこに行った・・・?
俺は二時間前の様子を思い出し、げんなりとした顔で王が現れるであろう王座へと目を向けた。
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