第1話 プロローグ

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第1話 プロローグ

運命の人を探していた。 探して、探して、探し求めていた。 そして出会った、あのキャンパスで。 君は運命の番では無かったけど、 初めて本気の恋をした。 あの日の記憶がいつまでも僕を追いかける。 眠っている間に密にキスをした君の柔らかい唇…… 抱きしめた体の細さ…… 甘えた様に絡んでくる腕。 僕を呼ぶ君の甘い声。 ずっと囚われていた。 あの日の君に。 風になびく柔らかな栗色の髪、 クルクルと動く大きなアンバー色の瞳。 桜色に染まった君の頬と、 白く細い項。 まだ幼さの残ったあどけない横顔、 屈託なく笑う無邪気な笑顔。 真っ赤になって怒った顔、 クシャクシャに泣きじゃくった顔。 好きで好きで堪らなかった。 一体何処で間違えてしまったんだろう。 何故早く気付けなかったのだろう? 全て、全て無くしてしまった。 全てが遅すぎた。 もう手が届かない。 手放した事を後悔した。 気付けなかった事を恨んだ。 僕を愛してくれた君、 素直だった君、 無邪気だった君、 恥ずかしがり屋だった君、 まだ子供だった君…… 好きだった、凄く好きだった。 心の底から愛していた、狂おしい程に。 こんなに愛せる人に出会えるとは思っていなかった。 可愛いかった、 愛しかった、 大切だった、 守りたかった、 無くしたくなかった、 君の全てが僕の命だった…… そして君は、何時でも僕の光だった。
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