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2.リビングに残された足跡
翌日、会社の食堂でランチをしながら先輩に思わず愚痴る。
「先輩一人暮らしですよね? いいなぁ。私も早く独立したいですよ。母がうるさくて」
「まぁ自由ではあるけどね。でも実家暮らしの方がお金貯まるよ? 家事もしなくていいし」
「そうですけどぉ」
口を尖らせる私を見て先輩は笑う。
「それにさぁ、誰もいない部屋に帰るってのも結構寂しいよ。私今彼氏もいないしさぁ。誰かが待ってて“おかえりなさい”って言ってもらえるのって結構嬉しいものじゃない」
そんなもんですかねぇ、と返事をし私はお茶を啜った。
今日も小言が待ってるのかとその日も暗い気持ちで帰宅したが、幸い母の機嫌は直ったようでその夜は特にヒステリーを起こされることもなく過ぎた。
(明日はお休みだからゆっくり寝よう)
そう思いベッドに横たわる。だが、翌朝五時に私は叩き起こされた。
「ちょっと真奈! あれほど言ったのに何やってんの!」
「何よぉ、まだ五時じゃない」
スマホの時計を見て私はうんざりした声を出す。ちょっと来なさいと母に腕を引っ張られ私は部屋から出た。
「やだ、何よこれ」
リビングにびっしりと足跡がついている。
「何よじゃないわよ。しらばっくれるんじゃないの!」
「だって私夜中にリビングなんか行ってないもん。ひょっとして……」
言い終える間もなく母は、父さんなら帰ってきてませんからねっとピシャリと言い掃除を始めた。
(何なのよ、これ。気味が悪い)
段々怖くなってきた私は思わず母に言う。
「ねぇ、母さん、泥棒でも入ってきたんじゃないの? 私本当に夜中歩いたりしてないよ」
だが母は私を一瞥したのみで何も言わず掃除を続けた。私がわざとやったと思い込んでいるようだ。
(もう知らない)
私は部屋に戻り二度寝した。だが翌朝も母の悲鳴で目を覚ますことになる。
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