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じっくりと、目の前の男を観察してみる。いつも顔を合せているというのに見ていて飽きないのは、彼が男前だからなのだろうか。
ついさっき出たところへ戻ってみて、起動したパソコンにパスワードを打つ。控えめに起動音が鳴って、肩が揺れた。
横を見ると、セイはまだ眠っていた。セイは睫が長い。女の子のようにくるりと上を向いている睫は、女性陣が羨むほどだろう。とても美しい顔をしているから、顔だけは女性受けがいいことを知っている。
引きこもりの私がなぜそんなことを知っているのかというと、担当くんがいつも教えてくれるからだ。
柔らかな髪は淡い色に染められている。いつだって根元からしっかり栗色に染まっているから、もしかしたら地毛なのかもしれない。地毛なんでしょ、騙されないよと言ったことがあるけれど、シラケた目で見つめられてターン終了だった。
セイの魔法を暴くには至っていない。
「どこに魔法を隠し持っているのかね」
魔性の男というやつらしいから、多分どこかから誑かし魔法を打っているのだと思う。
ふわふわと揺れている髪の毛をつまんでみて、猫っ毛が指先に馴染む感触を楽しんだ。私がこんなに自由にセイに触れられるのはセイが眠っているときくらいだから、こんなときくらい好きにさせていただこうと思っている。
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