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「お誕生日おめでとう」
ありがとう、と電話越しに明るく答える彼女の声を聴いて、僕はほっとした。どうやら今日は、体調が比較的いいのかもしれない。
「会えないのが残念だぁ」と、名残惜しそうに彼女は呟く。「直接祝われたかった」
「ごめんね」と、僕は言った。「せっかくの誕生日なのに」
「まぁ、しょうがないよね。こんな状況じゃ」
今年の一月、未知のウイルスが海外のとある国で発生し、瞬く間に世界中に広がった。日本も例外ではなく、その前代未聞のパンデミックに巻き込まれた。世界は大混乱になり、テレビでは毎日、毎日、そのウイルスに関するニュースが報道されている。
「でも、もう一年経つんだね」という彼女の台詞に、そうか、と、時の流れを感じずにはいられなかった。
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