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◆
「ありがとう」
ママはパパの亡骸にそう言ったと思う。
「幸せだったわ」
こと切れる前にそう言ったようにも思う。
幸せ?
どこが?
毎日、誰かが殺され、誰かを殺しているこの国で?
そして今、自分も死のうとしているのに……。
これが幸せ?
みんなが信じ祈っている神様は、幸せなんかくれやしない!
自分で何とかするしかないのよ!
フウと重い息を吐くと、ヌヌは脚を止め、鋭い視線で振り返る。
その先には、牙を剥く軍用犬、四頭。
「かかっといで、血祭りに上げてあげるから」
その言葉に呼応するかのように、四頭が一斉にヌヌに飛びかかる。
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