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「グググッ」
悲鳴をこらえつつ、噛みつかれた左脚を軸に躰を捻り、右膝に全体重をかけ犬の上に倒れ込む。
そこへ、肋骨を折った筈の一頭がいつの間にか忍び寄っている。
さすが軍用犬。四肢の骨すべてが折れても、這ってでも敵に迫ると噂されるだけのことはある。
そしてもう一頭。
マズイ!
あたしに魔法が使えたなら、コイツ等を一瞬で消せるのに!
危機迫るなか、ヌヌの脳裏にあらぬ妄想がよぎる。
チチンプイプイのプーイのプイ! そう心の中で呟いて左頬にある小さな泣き黒子を撫でる……。もちろん何も起こらない。
ダメよね?
唸り声とともに犬どもが飛びかかる。
反撃しなければ。しかし、躰は守りに入ってしまう。
ダメ! そうじゃない!
腕が自分の意思とは関係なく頭部をカバーするように、十字に重なる。
ヌヌはダメだと思いつつ、目を瞑ってしまう。
ブンッ!
不意に風圧。
来たか?
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