やられたからやり返す。それのどこが悪い?

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「さ、立ちな。儀式(エグダス)は終わりだよ」  困惑しながらヌヌは差し出されたイリーナの手を取り、立ち上がる。 「どうしたの? ルール違反じゃないよ」素っ気なくイリーナは言ってボーイッシュな短髪を掻き上げた。「司祭様はこうおっしゃった筈。夜明けのサイレンが鳴るまで逃げ切れ。そして無事に還ってこい。それだけ。助け合ってはいけないとも、木で槍を作ってはいけないともおっしゃってなかった筈だよ」  確かに。  ヌヌは情けない笑顔を返した。 「あたしはね、森に入るや適当な枝を見つけて、石で先を削って槍を作ったんだ。犬が放たれるまで一時間もあったから、余裕さ。念のため六本作ったんだ。実際に使ったのは二本。そして、あんたを助けるために三本使った」そう言って、イリーナは手製の槍に目をやる。「これが最後の一本。やさしいあんただから、犬を一匹も殺さずに逃げ切ろうって思ったんだろ。ったく、いつまでもお嬢様だからね。自分の体力を考えな。ぎりぎりになってモードを切り替えたって、遅すぎるよ」  ヌヌには返す言葉が見つからなかった。 「最後のエグダスはね、武闘の技術はもちろん、体力も知力も、すべてを使ってクリアするのがテーマなのさ」そう言って満面の笑みをヌヌに投げかけた。「あともう一つ、友情だね!」
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