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「ありがとう……」
ヌヌは小さな声で言った。
「テヘ。照れるねぇ」イリーナは少年のように頭を掻く。「一緒にコーレッジへ行くんだろ」
ヌヌは頷く。
「あたし、方向音痴だから、イリーナさんに連れてってもらわないと、きっと迷子になっちゃう」
「そうだね、あんたの『能力』のひとつは方向音痴だからね、ってかそう言う意味じゃないだろ!」
ヌヌは笑った。そして、イリーナも笑った。
彼女たちの傍には、槍が突き刺さった犬の死体が転がっていた。
ヌヌはそれを見、顔を強張らせた。
「あたしさ」とイリーナは彼女の視線を逸らせようと、言った。「本当は、おととしエグダスを受けコーレッジへ渡る予定だったんだけどさ、例のウイルスにやられて二年遅れちゃったじゃない。その間何をやってたかと言うと、槍投げの練習をしてたんだよね。それがあんたを助ける役に立つなんてね!」
ヌヌは頷き言った。
「確かに。イリーナさんがいなければあたしはやられてた。つまり、去年のウイルス騒動がなければ、あたしは犬にやられ、エグダスに落ちてコーレッジへ行けなくなっていた……」
「ま、運命だね」
「運命か……」
「向こうに行っても、腐れ縁で助け合っていこうな!」
ヌヌは力強く頷いた。
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