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二人が村に着いたのは昼過ぎだった。いつになく豪勢な昼食の香りがたなびく。既に彼女たちが戻ってくる知らせが届いていたのだ。
その香りに彼女たちは猛烈に空腹を感じたが、それよりも疲労が勝った。
村の幹線道に辿り着くや、二人は膝を突き、眠るように砂利道に倒れ込んだ。
「おめでとう」
ヌヌがゆっくりと瞼を開けると、村長の笑顔がぼんやりと見えてきた。
「よくやったのお」
隣にいた司祭も声をかけた。
寝かされていた簡易ベッドの周りには巫女役の小さな女の子たちが花束を持って立っている。
「これでコーレッジへ行けるのですね?」
細い声で、ヌヌは確認した。
正装に身を固めた村長は強く頷いた。
「これで、みなさんに恩返しが出来る……」
ヌヌは目尻から涙を流し、呟いた。
「まだそんなことを言っておるのか。お前は村の子だ。司祭もお前を我が子のように思っておる」
「何人?」
少し離れた所から声が聞こえた。イリーナだ。
彼女も同時に眠りから覚めたようだ。
「お前たち二人だけじゃ……」
村長が重々しく応えた。
「あたしたち、だけ……」
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