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「ぶわっ!」
息苦しさに、彼女は咳き込み、口の中にあった瓦礫の粉塵を盛大に吐き出した。
視界がゆっくりと戻ってくる。
青い空。立ち昇る黒煙。焼け焦げた壁の残骸。
あたしは何故倒れているの?
胸の辺りが重い。
もう一度激しく咳き込む。
喉に残った粉塵が血とともに宙を舞う。
頚をゆっくりと起こす。
仰向けの躰の上に何かが乗っている。
グレーのジャケット……?
パパなの?
自分の躰が重いのは、父の大きな躰が覆い被さっているからだと悟る。
「……パパ?」
彼女は自分が思ったほども声が出ないのに驚きつつ、喉のみ痛みをおし、再度父を呼ぶ。
「パパ?」
返事はない。
焦点が合ってくると、父のジャケットには大きな穴が空き、焼かれたような煙が燻っているのが見えた。赤黒い何かも付着している。
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