62人が本棚に入れています
本棚に追加
●
「どうしてワンちゃんを殺さないといけないの? おととしみたいに盾で防ぐだけじゃ、ダメ?」
棍棒を持って犬と闘うことを命じられ、ヌヌという名を貰った女の子は親代わりの司祭に訊いた。
「人と闘ってもよいが、それでは人を殺すことになるが、それでもよいか?」
ヌヌは返事に屈した。
「軍用犬はペットではない。兵士と思えばよい。お前の家族を殺した憎き敵の兵士と思うのじゃ」
ヌヌは曖昧に頷いた。が、次の瞬間、幼いながらも怒りを薄緑色の瞳に宿し、言い放った。
「わかったわ、司祭様。あたし闘う!」
「そうじゃ、それでよいのじゃ、シスター・ヌヌ」
だが、実際の闘いではヌヌはためらい、左太ももを噛みつかれた。
何十もの犬の頭蓋骨をぶら下げた司祭が電撃棒で犬を制し、この時は難を逃れた。
闘い後、司祭は言った。
「こんな獣が可愛いのか?」
そこに、温厚な司祭の姿はなかった。
「お前を傷つけるものはすべて敵じゃ!」
牙を剥き、咆える犬を前に、司祭は威圧的に叫んだ。
「これが可愛いか? これが可愛いか? これが可愛いか!」
泣き叫ぶヌヌの結い上げた長い髪を掴み、檻の軍用犬に近づけ怒鳴る。
最初のコメントを投稿しよう!