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◆
ヌヌは己を非情にするため、頭を軽く振り、モードを入れ直す。
殺る!
憎しみに満ちた瞳で犬を睨みつけ、渾身の力を親指に籠めて頚の骨を砕いた。
そこへ二頭の軍用犬が藪から躍り出てきた。
「遅いよ、お前たち!」
叫ぶや、迫る犬どもに対し、今殺した犬の骸を棍棒のように水平に薙ぐ。
一頭の鼻をヒット。続けてもう一頭も。
もちろんこれでタフな軍用犬が怯む筈もない。
素早く起き上がるや攻撃モードに。
さらに、追いついてきた三頭と合流しヌヌを取り囲む。
彼女は焦らない。
一呼吸つく。
既に犬たちの弱点は知っている。
掴んでいた犬の骸を威嚇するようにぬかるんだ地面に叩きつけて見せる。
「お前たちの仲間は、ほら、死んでるよ!」
弾けた泥が顔にかかるが気にせず犬どもを睨みつける。
恐らくリーダー犬だったのだろう。一瞬、犬どもの動きが止まる。視線を仲間に走らせている。どうする? そう問うているかのように。
これが群で襲うように訓練された軍用犬の弱点だ。
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