運命的な運命

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 私は運命的な出会いをした。今、その彼の足跡を辿っている。    彼と最初に出会ったのはあの街。  彼と目が合った瞬間、お互いに何かを感じていたはず。  私は、彼を探した。一日中探した。毎日毎日探した。そして見つけた。  でも、ただ見つめるだけ。それだけでもよかった。  見つからない日とただ見つめる日の繰り返し。  そして、運命的な出会いから100日目。ようやく彼に声をかける決心がついた。  待ちわびたこの日。彼に近づく。 「あの、私、あなたのことを」  今私はある女に付きまとわれて困っている。  あいつと最初に出会ったのはあの街。そしてその後、毎日毎日あいつを見かけた。  私は気が狂いそうになった。  あいつはいつも夕方になると駅の階段付近で立っている。  今日も遠目からあいつを確認した。  今日のあいつはベージュのコートに青のジーンズを履いている。確かこのコーディネートは以前もあった。そして、何気なくあいつの手元を見ると、持っているスマホのカバーが変わっていた。そういえば昨日、駅前の量販店で買い物をしているあいつを見かけた。どうやらその時に買い替えたようだ。若干私のスマホケースに似ているような気がする。  前にもこんなことがあった。私が持っていたトートバッグと同じものをあいつが持ち歩いていたのだ。それを発見したときは愕然とした。  次はどんな物を私とお揃いにしてくるつもりだろうか。  今日のあいつは遠目からだと少し疲れているように見える。きっとコンビニのアルバイトで、誰かに何か嫌なことでも言われたのだろう。  アルバイト先のコンビニから徒歩10分のところにあいつの家があるのだが、家の前を通ると飼い犬が吠える。あれだけはどうにかして欲しい。私は犬が苦手なのだ。いい加減、私のことを覚えて欲しい。  そして、窓の外からでもわかるのだが、あいつの部屋には韓国男性アイドルのポスターが貼ってある。今どきの女子だ。  私は、少し遠くに高層の建物を見つけて、わざわざ高性能の双眼鏡を購入し、あいつの部屋を見てみたことがあるのだが、あまりはっきりとは見えなかった。せっかく高価な双眼鏡を買ったのに。また気が狂いそうになった。  そんなことをぼんやり思い出していると、突然あいつはこちらを見て、私の方へ近づいてきた。そして、私の前に来て緊張気味に言った。 「あの、私、あなたのことを、前から知っていたような、前から会っていたような気がするんです。他人じゃないと言うか。すみません。変なこと言って」  私は笑顔で答えた。 「そうだったんだ。僕、ずっと前から君のストーカーなんだよ」    
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加