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「くっ」 手を激しく上下にスライドさせ、奴は僕らの前で一人でイッた。 羞恥心など無いに等しい有り様に、僕は目を背ける。 「立てる?ここから出よう」 彼女に僕は声をかける。 良く見ると、彼女は細かく震えている。背後で満足した息遣いがしたと思ったら 「彼女イカせてあげないと。半端で辛そう」 と言う奴に 「はあ!?アンタ、この状態で何言ってんだよ!」 さすがに僕の堪忍袋の緒が切れた。ドンッと彼を突き、ベッドから落とす。 全裸のまま尻餅をついた奴がクスクス笑って、 「酷いなぁ。翔琉()にシテ貰う為、俺、我慢して抜いたのに」 「えっ?!」 「なっ!!」 奴の話に、顔を伏せていた彼女がパッと顔をおこし、僕と同様驚いた一声を上げた。 僕は唾をのみ、 「…ホント、アンタ頭おかしいんじゃないか」 直前まで自分が抱いていた女を抱けという、奴の言葉が三人の間を漂うのを呆然と肌で感じていた。 「私はオモチャじゃない!」 僕が入って来て初めて聞く彼女のまともな発言。 僕には一瞥もくれず視線は奴に向けたまま…彼女達の間に何かが生じているのを察する。 「そんな風に思ってない!」 と奴は反論し、うつ向いて膝を抱える。 「…辛いでしょ?だから元彼にイカせて貰って。どうせ翔琉()とは金輪際出来ないんだからさ、ね、最後に」 籠った声で話す奴の提案に、彼女を覆う先刻からの震えが酷くなる。 「はっ!」 歯を喰い縛り、彼女は低い声で呻く。 「それに、」 奴はそんな彼女に頓着せず、顔を上げ話を続ける。 「さっき約束したよね、妊娠したら俺の奥さん確定だって。あれ、翔琉()の子でもO.K.だよ」 「!!」 僕は絶句した。 「それが俺の愛の証」 慈愛に満ちた笑顔で狂った提案をする奴が、これまでで一番幸せそうに見えるのは、僕の気のせいだろうか?
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