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佐竹ちゃんが翔琉君ときちんと別れる前に、セックスして申し訳なかったと…
本当は佐竹ちゃんを誰にも渡したくないが、自分がどれだけ愛してるか証明する為にも、更には翔琉君に謝意を示す為にも、自分の目の前で私を抱いてあげてと…
西陽が室内にある全てをオレンジ色に染める中、彼が滔々と話す。
人を惑わし唆す声音。
それは翔琉に見られ、羞恥に俯いていた私が耳にした、切実に私を求める彼の声とは全然違う。
悪魔の囁き。
変化する彼。
先刻私に「愛してる、行くな」と泣いて哀願した彼。
今は迷える者を導く聖者の様に、私を抱く事を翔琉に説く彼。
狂った愛情表現をする彼に、私は心身共に囚われてしまった。その証拠に私の体を這う震えは、肌寒さからでも、羞恥心からでも、屈辱に耐えてるからでも無い。
疼き、だ。
絶頂に届きそうな直前解かれた身体は、あさましい悦びの再開と解放を求め、疼き悶え震え続ける。
モラリストの翔琉でさえ、狂人に魅入られた様に彼を見続けている。
「彼女の中、キモチイイの知ってるよね?」
「…」
「つけずにシテご覧。サイコーだから!」
「…」
彼が話す度、私の肩に置かれた翔琉の手がビクッとなる。
「万が一子どもが出来ても大丈夫。佐竹ちゃんの子は、もれなく俺の子だから!」
アハハハって彼は嬉しそうに笑う。
そして、次の彼の一言が翔琉を壊した。
それは意図してか、はたまた悪癖の蛇足か…
優しく抱くのが常の翔琉が、鬼の相で私を突いた結果に変わりはない。
可哀想な翔琉、私達の愛憎に巻き込まれて。
可哀想な私、もう彼から離れられなくて。
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