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まだ薄暗い早朝、音を立てるのが躊躇われる程、全てが眠りの中だった。 目の前の安らかな寝顔の彼女を、いつまでも見ていたい。 僕は腕枕してる反対の方を動かし、彼女の前髪を整える。冬の吐息の様な白い肌が現れた。額に口づけしようと思ったら、 「う、うーん」 彼女は寝返りを打った。 僕は午後イチ、彼女は朝イチからの仕事だ。 本当はもっとイチャイチャしたかったけど、彼女の為に早く帰ろう。 そっと腕を外し、彼女の左肩の後ろに口づけた。僕は静かにベッドから降り、あちこちに散らばった衣類を拾い、身支度を始める。 布が素肌を滑る度に、数時間前の情事の激しさが思い出された。 別れ難い気持ちで、彼女の頬にキスを落とし、彼女の黒髪をすいた。 意を決して離れ、彼女の家から出る。 震える位外は寒く、目の前の津久井が住んでいる母屋は室内が暗い。好きな女が他の男のテリトリーにいるのは、経緯を理解してても癇に触る。 靴の踵が石畳でターンして、彼女がベタ褒めのガラスの箱を見上げる。 温室をリフォームしたという離れ。 津久井が見つけ温室栽培した華は、今まさに開花しようとしている。 甘い匂いに誘われ、寄ってくる虫は多い。虫除け役は暗黙の了解だった。 だが事務所の、津久井の当初の意図を外れて、僕自身が彼女の蜜を吸う恋人になった。 愛しい女性はまだ夢の中、後でモーニングコールをしてあげよう。 その発案が愉快で、身体が軽くなりスキップして鼻歌まで出た。
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