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ドラマの収録が本格的に始まり、彼女と会う機会が全く無くなった。 その間散発的に近況を報告しあったが、既読しても返せなかったり、お互い連絡が一方通行な状態が続いた。 僕の役は、自ら早世した人気俳優兼歌手だ。未だに国民の記憶に残る彼の半生を、プライベート面から追っていくドキュメンタリータッチのドラマ。 爽やかな俳優の謎に包まれた死の選択、台本を読んだ時背筋が震えた。当たると思った。実在した彼を今も敬愛してるファンは多くいる。僕自身、彼は憧れの対象だった。 僕が抜擢された理由は、雰囲気が似てるから。役作りで歌唱特訓も入れ、毎日があっという間に過ぎていった。 久しぶりのオフの日、美希のマネージャーさんから連絡があった。起き抜けの声で携帯を取ると、 「ゴメン!翔琉君、まだ寝てた?今日は終日オフだよね?悪いけど美希を迎えに行ける?」 早口で話す内容に時計を見ると、もう昼をとっくにまわっている。 「どうしたんですか?」 僕と美希が付き合っているのを知っている互いのマネージャーは、スケジュールを共有してオフを合わせたり会える時間を捻出してくれている。 「近頃、彼女に変なファンレター届いてるから、なるべく一人にしたくないのに私、引っ越しの搬入立ち合いで当分動けないの」 ああ… 部屋が見つかり、引っ越す日が決まったって美希から連絡貰ったのは、いつだった? マズイ、忙し過ぎて注意散漫になっている。一緒に家電選びも口約束だけに終わってしまっていた。それに、 『マネージャーさん、何か隠してるんだよね。最近やけに一人で行動するなって煩く注意してくるの』 と彼女は薄々勘づいて、僕に報告していた。 布団からガバッと起き上がると、 「彼女は今何処に?」 「津久井さん家に鍵を返しに行ってるんだけど、電話に出ないの」 携帯をスピーカーにすると、僕は急いで身支度を始めた。
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