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「その変なファンレターというのは、どんな感じなんですか?」 マネージャーさんが搬入業者と話す声が小さく聞こえる。 「…ここ最近美希、上から目線の女王様っぽい役が続いたから、何かソッチ系の人が勘違いしちゃってる感じなの。大丈夫だと思うけど文面がキモいから、念の為一人にしない様にって社長指示が出て…」 と又、業者に指示を出している。忙しいみたいだ。 智生社長は気配り上手だ。だから事務所の皆、安心してついていってる。 「僕、迎えに行きます」 そう言って車の鍵を取り、電話を切った。 駐車スペースに降り、車に乗る。 国産車だが。ツーシートでスポーティーモデル。父親が乗りたがってた車種だ。 郷里の道路では、日常使いの実用的なタイプが多い。実際、実家が保有する車は父の両親、僕の祖父母の通院や家族の買い出し等、日々の営みに便利な車種だ。 美希が鍵を返しに行っただけで、身一つをピックアップするならこの車で十分。しかし今後の事を考えると、積載量をバージョンアップした方が良いかもしれない。 都内で車を持つ必要性は薄いが、最近人の目が気になる事が多くなった。大物芸能人ではないが、マンション前で記者らしき影を感じる時もある。そんな時車で出てしまえば、気軽にプライベートの時間を謳歌出来る。 気になるのは、彼女がマネージャーさんからの電話を取らない事だ。 信号待ちの間、ふいに彼女と津久井のツーショットか浮かんだ。それも濃厚なやつ。 「まさか」 頭を振る。 彼女達が接する仕事は少ないし、同じ敷地に住んでても滅多に会う事がないと、以前彼女は僕の邪念を一笑に付した。 でも今日に限って、嫌な予感がムクムクと沸き上がる。 津久井の家は住宅街にあり、来客用の駐車スペースがない。だから一番近いコインパーキングに停め、僕は駆け足で向かった。
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