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第1ステージ 『年下の男』
この世に生きる何万、何億の男女の中にこんな物語があってもおかしくないだろう。
彼女、嘉山雫(かやましずく)は浴槽に肩まですっぽり浸かると一分、あと一分と我慢をし、汗をかく。
『今日の自分へのお仕置きはここ迄にするかな、終了。』
一日を振り返り、楽しかった事や嬉しかった事、はたまた自分の至らなかったところや、人の悪口を言ったなど自分のモラルに反することをするとこのように限界ぎりぎりまで試し、自分をいじめる。
嫌、今となっては欠かせないルーティンのような趣味となっている。
バスタオルで滴る雫を拭き取ると柔軟剤のほのかに香る匂いに癒された。
『いい香り、これに変えて正解ね。』
店頭で少し値が張ったが新しいもの好きの雫にとって選択は正しかったと確信した瞬間だった。
新商品、新発売とこういったフレーズに昔からとても弱い。
大好物のチョコレートなんて今までに何種類買い込んだだろうか。
中には一口だけ食べ、冷蔵庫で眠っているものも少なくない。
だが、店頭で見つけると見て見ぬ振りは出来ずに結局、購入してしまうのだ。
口に放り込むとカカオの何ともいえない香り、舌で転がすと徐々に溶け甘味を増すあの味わい。
一瞬の出来事だが疲れているこの身体を極上気分にさせてくれ、人生にとって決して止められない一つであり、また幸福を感じる瞬間なのだ。
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